南こうせつ「32歳で始めた野外イベント『サマーピクニック』、75歳の今回が正真正銘のラスト。開催を望むファンからの署名で決心がついて」
◆ラストサマーピクニックを楽しみたい いったん90年に一区切りをつけたサマーピクニックですが、僕が50歳になった99年に福岡で、2009年に静岡のつま恋で、14年には大阪で行いました。 ただ、さすがに疲れてきてしまった。文字通り手作りなもので(笑)、場所決めから構成、演出、ゲスト選び、果てはゲストの送迎の手配まですべて僕が決めてスタッフに指示を出す、というスタイルを貫いてきたんです。細やかな配慮が必要で、何かと大変なんですよ。 これまでトラブルは一度もありませんでしたが、そうならないようにしてきたからだと自負しています。 たとえば会場付近にお住まいの方々に音が流れてしまうことを考慮して、福岡では事前に周辺の2~3万軒のお宅に「ご迷惑をおかけしますがよろしくお願い致します」と書いたビラをお届けするようにしていました。些細なことでも問題が生じると、話し合いの場を設けて自ら交渉もしました。 どんなに万全を期しても、当日を迎えるまで気が抜けないのが野外コンサートの現実です。鉄骨でステージを作るだけで1000万円単位のお金がかかるのに、雨が降ったらすべて水の泡。天気予報をチェックしながら、ハラハラドキドキ。これが精神衛生上もっともよろしくないです。(笑)
さすがに限界かなと考えるようになったのは5年前、70の声を聞いた頃でした。これで終わりにしようと「サマーピクニック~さよなら」というタイトルをつけたところ、一回目から来てくださっている筋金入りの人たちから、「『さよなら』は寂しすぎるのではないか」という声があがって。妥協案として「さよなら、またね」に修正しました。 そうしたら数年前から「あれ、『またね』と言ってましたよね?」と脅しに近い声が寄せられるようになった(笑)。ファンの皆さんから署名までいただき、もちろんありがたいことなのですが、これはどこかのタイミングで僕がビシッと終わらせないと永遠に続くことになるぞ、と思いました。 だからこの9月23日の公演が、正真正銘「ラストサマーピクニック」です。 会場は日本武道館。憧れのビートルズがコンサートを行った夢の場所であり、僕が日本人で初めてソロコンサートを開催したゆかりの地でもあります。屋内ですから天気の心配もいりません。 いや、もちろん最初は野外コンサートらしさを出そうと、アリーナ席に人工芝を敷くことを提案したんですよ。「そんなことをしたら1000人くらいしか動員できません!」と猛反対されました(笑)。 そういうわけで、屋内で指定席のあるサマーピクニックとなりますが、ゲストにさだまさしさんと森山良子さんをお迎えし、さてさてどんなコンサートになるのだろうと、僕自身いまからワクワクしています。 ラストを迎えるのは寂しい。寂しいけれど、寂しいと感じるのはそれだけ楽しかったからなんですよ。 この世は諸行無常ですから時の流れには逆らえない。何事もいつか終わりがくる。それでいいのだと受け止めて、有終の美を飾ろうと張り切っています。 (構成=丸山あかね、撮影=洞澤佐智子)
南こうせつ