「日本は地域大国だ」 中国・王毅外相の演説から見えた2025年の対日戦略
日本に釘を刺しながらも接近を始めた中国
日本について王毅外相は「戦略的互恵関係の推進」と「建設的かつ安定的な関係構築」という2023年当時の岸田文雄総理大臣と習近平主席の日中首脳会談で確認した二つの方向性に言及した。中国はこうしたスローガンにこだわる国だ。その上で「核汚染水に対する中国側の独自調査を行った」ことを改めて指摘し、「今後も日本側の義務と責任を果たしてほしい」と念を押した。王毅外相はここで「核汚染水」という日本側が反発するワードを使った。国家間の関係改善を急ではいるものの反日感情が高まる国民を脇に置けば逆に“政府は弱腰だ”と批判を受けるからだろう。 だが日本に関する言及はこれだけで終わらなかった。「2025年の抗日戦争および反ファシズム戦争勝利80周年を記念し正しい歴史観を広める」と王毅外相は訴えた。日本からすれば終戦80周年だ。覚えているだろう。2015年9月の70周年当時、中国は軍事パレードを行うとともに当時の安倍晋三総理大臣が出す戦後談話の内容に様々な球を投げてきた。2025年もじわりと牽制を強めてくるだろう。ただし米国に対抗する上で中国が望む方向へ日本を誘導しながらの牽制になることが予想される。 王毅氏は野党のない中国で10年以上外相を務めている。習近平主席は就任後12年になる。中国はすでに日本に接近している。トランプ政権という荒波が襲う前に日本を取り込んでおきたいからだ。カードとしても協力者としても自国の経済復興の上でも。 一方、日本も接近を図っている。なぜならば経済の先行きを考えるとインバウンド消費拡大や消費財の市場確保の上で中国への接近がカギになるからだ。両国の国内世論は反発しあう。だが指導者同士が会えば国民は後をついていくだろう。ただし中国に接近するにしてもどんな国際政治の構図の中に中国がいるのかを日本は冷徹に認識し、ガードもしっかりと固める。そんなしたたかな外交が求められる。
テレビ朝日