「日本は地域大国だ」 中国・王毅外相の演説から見えた2025年の対日戦略
中国がつけた国の序列で日本は
後半部分で王毅外相は中国が位置付ける「大国」と「周辺国」の範疇(はんちゅう)に従って各国との関係を振り返った。この10年の間に序列は変遷してきた。米国はしばらくの間、「大国」のトップだった。初回の2015年は大国の米欧ロ、そして日本を含めた周辺国のアジアという順序だったが、2016年は南シナ海問題で関係修復したばかりのフィリピンを筆頭に日本を含めた周辺国から始まり、大国ではロシアと欧州の順序が入れ替わり米ロ欧になった。 ところがトランプ政権誕生で米中対立が深まると、2019年には大国枠でロシアが最初に登場しロ米欧に替わった。2020年には米国は欧州の後に引きずりおろされロ欧米になった。2021年はロ米欧だ。バイデン政権に多少期待したのだろう。ウクライナ戦争が始まった2022年は再び米国がトップに出て、米ロ欧になった。中国としてはロシアと同列だと思われるのは損になると計算したのだろう。しかし2023年は大国の範疇(はんちゅう)にロシア、欧州、そして日本が格上げして位置付けられ、米国はその後に登場した。バイデン政権がNATOや日米豪印のQUADを伴い中国包囲網を強固にしたことと関係しているといえる。だが対立する米国との仲介をしてくれそうな日本にはしがみついている状態だ。 では2024年演説で序列はどうなったのであろう。大国枠ではロシアが第一だ。次は欧州で一括りにまとめ特に習近平主席が首脳会談を行ったフランス、セルビア、イタリアなどの名前を挙げた。続いて周辺国が並んだ。その後に地域大国という新たな聞きなれない枠が登場しここに日本とインドが並んだ。米国に対抗するテコとして使えるように日本に接近している。日本と同じく米中双方の間に立てるという理由で中国はインドとも12月に国境紛争解決で合意し関係強化を図っている。インドは日米豪との枠組みであるQUADにも中国とのBRICSにも二股で加盟しているのだ。米国は最後だ。 ここで王毅外相は「皆さんが気になるのは米国との関係でしょう」ともったいをつけた。米中の協力関係に期待した後、「台湾や民主・人権問題は絶対に譲れないレッドラインだ」と釘を刺した。米国がしばしば介入するからだ。トランプ次期大統領に聞かせるために述べたのだろう。