「テレビは終わり」は極論、当たり外れは“神の領域”…トレンディードラマ立役者の言い分
米有料放送局HBOを研究し、「セックス・アンド・ザ・シティ」など独自ドラマの成功を参考に、2003年に独自ドラマ製作プロジェクト「ドラマW」をスタートした。それに続く「連続ドラマW」で「パンドラ」「空飛ぶタイヤ」などが評価され、出演を望む役者や監督が増える好循環ができた。有料放送のジャンルが確立され、18年には加入数が過去最多の290万件にまで増えた。
「プレミアムなエンタメ」で生き残り
ただ、コロナ禍でコンテンツ力が弱くなったのが痛かった。人気だった音楽ライブ、世界中のスポーツが軒並み中止になり、ハリウッドも映画の公開を取りやめたからだ。一方、巣ごもり需要で動画配信サービスが急拡大した。21年から配信サービスの「WOWOWオンデマンド」を始めたが依然、競争は厳しい。
放送中心から、放送と配信の2軸にしたのは、従来のサービスを楽しんでもらえる50代以降の会員を大事にしつつ、配信を新規会員の入り口にするためだ。放送では自由に商品設計ができないが、ネットなら自由に商品も価格も設定でき、従来の商品では入ってくれなかった若い世代がスポーツコンテンツを見るために入会してくれるなど、手応えを感じている。長い将来で見れば、放送から配信にサービスの比率が変わっていくだろう。
いずれにせよ、「プレミアムなエンタメ」という地位を守らないと生き残れない。カギは質の高いオリジナルコンテンツ、WOWOWでしか見られないスポーツや音楽ライブだ。その意味では今年、「ゴールデンカムイ」が映画で大ヒットし、その続編の連続ドラマW版も好評なのがヒントになる。07年以降、映画製作も続けており、培ってきた映画とドラマの努力が結びついた記念碑的な成果と言える。おかげで会員数の増加に貢献している。
やまもと・ひとし 1964年生まれ、埼玉県出身。90年、WOWOW入社。2003年に「ドラマW」を企画。24年から現職。