「テレビは終わり」は極論、当たり外れは“神の領域”…トレンディードラマ立役者の言い分
動画配信業界の話をすると、ナンバー3位以内に入らないと脱落するという危機感はある。4番手が生き残れるかはグレーゾーンで5番手になると厳しいという感覚だ。
これからは、プロが作ったプレミアムなコンテンツを提供する我々の動画配信の市場と、若者が好むTikTokなど数分のショート動画の市場、放送局の市場の三つが併存し、消費者の時間を奪い合う世界になっていくのではないか。ただ、全体の傾向として、若者が長い作品を見られなくなってきている。ショート動画が生成AI(人工知能)でバンバン作れる時代はやって来るだろう。AIが作った作品を人間がただ消費するというのは、制作へのやりがいが冷めないか気がかりだ。
つつみ・てんしん 1977年生まれ、東京都出身。2006年、USEN入社。10年に同社U―NEXT事業部長。17年から現職。
「淘汰される有料衛星放送」WOWOW・山本均社長
衛星放送を業界として語る時代は終わってしまったのではないか。かつては地上波よりも効率よく全国どこでも見られる衛星放送の優位性があったが、いまや動画配信サービスと戦わざるを得なくなった。有料衛星放送がなくなるとは思わないが、淘汰(とうた)されていくだろう。大リーグ中継が人気のNHKBSや、広告付き無料放送のキー局BS、ショッピング系、固定客がいる有料放送モデルしか生き残るのは厳しい。配信勢が安い料金であれだけ見せており、(1990年代以降に注目を集めた)“衛星多チャンネル放送”の時代ではなくなってしまった。
WOWOWは、NHKの衛星放送用に打ち上げる放送衛星の空きチャンネルを使って、民間初の衛星放送を行うために1984年に設立された。地上波の広告ビジネスとは違い、欧米で始まっていた民間有料放送に日本で初めて取り組むことになった。株主構成は大企業だらけだったが、ベンチャービジネスだ。
地上波との差別化のため、映画はハリウッドの大手と契約して新作が地上波より早く提供できる契約を結び、ノーカット、ノーCMで放送。スポーツではテニスなどを最初から最後まで生中継した。91年に開局すると、翌年には有料放送史上、最速で加入数100万を達成した。