「103万円の壁」が引き上げられたらどうなる?税制改正議論のポイントを弁護士が解説
2024年10月27日に投開票された衆議院議員選挙で、「103万円の壁」の引き上げによって「手取りを増やす」ことを掲げた国民民主党が大幅に議席を増やしました。 与党が衆院過半数を得られず、国民民主党との政策連携の必要性が生じたため、「103万円の壁」の引き上げが現実味を帯びています。 本記事では、最近注目されている「103万円の壁」とは何なのかを、税法の観点から解説します。 ※本記事は、政治的意見の表明を目的とせず、特定の政党を支持または批判するものでもありません。
1.「103万円の壁」とは何なのか?
「103万円の壁」とは、税金に関する各種控除のボーダーラインが「年収103万円以下」とされていることを表した言葉です。 「103万円の壁」により、本来もっと働けるはずの労働者が、手取りの減少などを恐れて「働き控え」をするなど問題が指摘されています。 「103万円の壁」が問題になる控除は、主に以下の3つです。 ・基礎控除+給与所得控除の「103万円の壁」 ・扶養控除の「103万円の壁」 ・配偶者控除の「103万円の壁」
2. 基礎控除+給与所得控除の「103万円の壁」
パートやアルバイトなどの給与所得者は、年間の給与収入額が103万円以下であれば、所得税がかかりません。 基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計額が103万円で、給与収入額が年間103万円以下なら課税所得がゼロになるからです。 ただし、年収103万円を超えたとしても、いきなり多額の所得税がかかるわけではありません。所得税は103万円を超えた部分だけにかかるので、少し超えただけであれば所得税の額はわずかです。 なお、基礎控除+給与所得控除の「103万円の壁」は、給与所得者だけに当てはまります。給与収入のない自営業者などには当てはまりません。 また、給与収入が年間103万円以内であっても、副業などによる他の所得を合わせると年103万円を超える場合は、所得税がかかることがあります。 参考:No.1199?基礎控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm 参考:No.1410?給与所得控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm