「103万円の壁」が引き上げられたらどうなる?税制改正議論のポイントを弁護士が解説
3. 扶養控除の「103万円の壁」
配偶者以外の親族を扶養している方は、一定の要件を満たせば「扶養控除」を受けることができます。 特に、まだ自立していない16歳以上の子どもを扶養している方は、扶養控除を受けられるケースが多いです。 ただし、扶養されている人が年間103万円を超える給与収入を得ている場合は、扶養控除を受けることができません。 扶養控除の金額は原則として38万円ですが、扶養されている人が年末時点で19~22歳なら63万円です。 たとえば、大学生(19歳)の子どもがたくさんアルバイトをした結果、年収103万円を超えたとします。この場合、親は63万円の扶養控除を受けられなくなり、納めるべき税金が一気に増えてしまいます。 扶養控除の「103万円の壁」は上記の理由から、学生アルバイトなどの「働き控え」に繋がることが懸念されています。 参考:No.1180 扶養控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180.htm
4. 配偶者控除の「103万円の壁」
配偶者(夫・妻)の所得が一定水準以下の場合は、「配偶者控除」を受けられることがあります。 配偶者の収入が給与のみである場合、年間103万円が配偶者控除のボーダーラインです。配偶者の給与年収が103万円を超えると、配偶者控除の対象外となります。 ただし、配偶者控除を受けられなくても、配偶者の給与年収が198万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けることができます。 配偶者特別控除の額は、配偶者の給与年収が増えるに連れて減っていきますが、150万円までは配偶者控除と同額です。 したがって控除額に着目すると、配偶者控除に関する「103万円の壁」は存在せず、実際には「150万円の壁」と捉えるべきでしょう。 しかしながら、配偶者特別控除の額が給与年収150万円まで配偶者控除と同額とされたのは、2018年以降です。2017年以前は、配偶者の給与年収が103万円を超えると間もなく(厳密には105万円以上から)、配偶者特別控除が減額されていました。 当時のルールが念頭にある方の間では、配偶者控除に関しても、依然として「103万円の壁」が意識されているかもしれません。 参考:No.1191 配偶者控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm 参考:No.1195 配偶者特別控除|国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm 後編では、「103万円の壁」が引き上げられるとどうなるか?について解説していきます。 取材・文/阿部由羅(弁護士) ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。 https://abeyura.com/ https://twitter.com/abeyuralaw
@DIME編集部