箱根駅伝Stories/苦悩の時期を経た順大・吉岡大翔 ジョグの改善で光明 「本当に感謝しかない」
新春の風物詩・第101回箱根駅伝に挑む出場全21チームの選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。新たな100年への第一歩を踏み出す大会に向かうそれぞれの歩みを紹介する。 箱根駅伝2025 順大のエントリー選手名鑑をチェック!
周りの期待と失いかけた自信
この苦悩は誰しもが理解できるものではないかもしれない。周りからの期待値が高いからこそ、自身が求めるものも大きい。順大・吉岡大翔(2年)が過ごしてきたこれまでの大学生活は、まさに見えないトンネルの出口を探すような日々だった。 長野・佐久長聖高時代の吉岡は、まさに超高校級のランナーとしてその名を轟かせていた。3年時の11月には5000mで、日本人高校生初の13分30秒切りを飛び越え、13分10秒台に迫る特大高校新(13分22秒99)をマーク。駅伝でも全国高校駅伝3区(8.1075km)で日本人最高の22分51秒、都道府県対抗駅伝でも5区(8.5km)で区間新(23分52秒)と無類の強さを誇った。 だが、大学では思うような結果を得られない時期が続く。1年目、9月の日本インカレこそ日本人トップの4位に入るも、駅伝では出雲駅伝は1区10位、全日本大学駅伝3区14位と苦戦。箱根は4区8位と健闘するも、「ほとんど単独走で、あまり手応えのないまま、あっという間に終わってしまいました」と振り返る。 それでも、「5000m高校記録保持者」の肩書きはつきまとい、思い悩む時期もあった。「あの頃はどん底すぎて、『自分なんかに注目しないで、他の人に話を聞けば良いのに」と思うことすらありましたね。個人のレースも結果が出ないし、駅伝でも順位を下げるだけで、何のために走っているんだろうと考えたりもしていました」。ネガティブに考えてしまうようになっていた。 そんな時に吉岡に声をかけたのが、高校時代の恩師である高見澤勝先生だった。 「高校時代から、『陸上は苦しさ9割、喜び1割で、苦しんだからこそ喜びが得られる』と言われていました。先生からは『高校時代に苦しまずに結果が出てしまったから、今は良い経験をしているんだよ』と。そう考えるとこの期間も決して無駄ではないと思えるようになりました」 さらに今季からチームに加わった今井正人、田中秀幸(トヨタ自動車)の両コーチの存在も大きかった。 「今井コーチは結果が出ないことを自分のように悔しがってくれますし、田中コーチは選手として、自らも結果を出されている。一緒に練習している立場としては大きな自信をもらえて、いろいろな面で支えてもらっています」とプラスに働いているようだ。