万博建築現場の熱中症対策最前線、凍らせて飲むポカリ配布やドローン活用したリスク回避策を実施/竹中工務店
〈作業所にコンビニや広くて涼しいトイレ、温度管理にドローン活用〉
作業所として、非常に珍しい取り組みは、コンビニエンスストアがあることだ。ファミリーマートが作業所内に出店しており、作業で必要な手袋やタオルのほか、おにぎりやサンドイッチなどの食事や清涼飲料などが豊富に並ぶ。一般人は建設現場に立ち入ることはできないが、竹中工務店以外の作業員が利用することも可能にしたという。中島作業所長は、「万博会場の夢洲は手付かずの人工島で、電気やガスのインフラがない状況で2023年4月に着工しました。夏場をどう乗り切るか、作業員の人たちにどう働いてもらうかを考えた時、コンビニエンスストアが思い浮かびました。仮事務所にコンビニエンスストアを入れたのは、おそらく当社で初です」。ファミリーマートの脇田俊彦さんは、店のコンセプトについて、「作業員の人たちが必要なものを意識し、軍手や工具、タオルなどの品揃えを充実させています。反対に、需要にマッチしていないものは全て省いています」と話した。 作業員が過ごしやすい環境づくりに向けては、トイレにも工夫がある。作業所内のトイレはすべて清潔感のある広々とした空間で冷房がきいていた。さらに、同社は現場のすぐそばで涼しい環境で休息できるように、休憩所や会議などに使える移動式の「オフグリッド型モバイルハウス」や、短時間で組み立て解体が可能なビニールハウスのような簡易型ハウス「エアーQ」を建設現場に設置している。
そして、熱中症対策のDX化にも積極的で、効率的に現場作業員の状態を把握するための機械やデジタル技術の導入も進めている。2024年から温度分布を表した画像が生成できるサーモグラフィを搭載したドローンを用いて、作業現場のリアルタイムの温度を作業員に共有し、注意喚起を呼び掛けている。 これらの組織的な熱中症対策の取り組みにより、2023年は自社作業員の“熱中症罹患者ゼロ”を達成し、「令和5年度おおさか気候変動対策賞」を受賞したという。