「携帯電話の長時間使用」と「頭部がん」に関連性はありません
限定的な研究を利用して広まった陰謀論
携帯電話ががんを引き起こすという考えは、多くの人にとって「もしかするとあるかも」と思ってしまう説ではあります。数分であれ数時間であれ、日常生活の中で私たちは放射線発信装置を頭に当てたり頭の横に置いていますしね…。おまけに、これまでに提示されてきたデータがよくわからないものだから、混乱を招きはしても、ハッキリした結論へと導かれるような状況ではありませんでした。 米国がん協会の公式サイトでは、携帯電話とさまざまながんの関連性について「諸説入り乱れている」としながらも、それらの研究の多くには制限が存在すると補足しています。 携帯電話と頭部がんの発生率上昇に関する研究結果は、これまで陰謀論者や不誠実な人たち、または誤情報を信じてしまった人たちが、文脈を無視する形で誇張して広げてきました。 あまりにもデマが広がってしまったため、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが13年の時をかけて「携帯電話は脳腫瘍を引き起こすのか?」というタイトルの記事を掲載したほどです。 このデマは、弁護士でもあり、一時は無党派から大統領候補として立候補したものの断念、現在はトランプ前大統領を支持しているロバート・ケネディ・ジュニア氏が拡散してきました。彼は他にも非科学的なデマを広げています。 国際がん研究機関(IARC)は、2011年に無線周波数電磁界を「人間にとって発がん性がある可能性がある」と分類しています。しかし、今回の研究を主導したオーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)の健康影響評価担当副長官であるKen Karipidis氏は、結論について「主に、ごく限られた人々を対象とした観察研究による証拠に基づいている」と声明で述べています。 同氏は今回のレビュー結果について、次のように付け加えています。 今回の観察研究の系統的レビューは、IARCの調査と比較して、はるかに大規模なデータセットと、より直近でより包括的な研究結果に基づいているため、無線技術による電波への暴露が人間の健康被害につながらないという結論により確信を持てます。 科学的事実を前にしても人は信じたいことを根拠なく信じるので難しいかもですが、そろそろナンセンスで非科学的な陰謀論を終わりにしたいところです。
Kenji P. Miyajima