スマホゲームにメタバース…「鉄道会社らしくない試み」が印象に残るJR西日本グループの総合展示会
世界でのべ2,000万人以上を集めた「バーチャル大阪駅 3.0」
いっぽう、メタバース(インターネット上の仮想空間)を活用したユニークな取り組みの展示もあった。その代表例が「バーチャル大阪駅」(初開業は2022年8月)の三代目にあたる「バーチャル大阪駅 3.0」である。 「バーチャル大阪駅3.0」は、人が集まる「場」を提供するサービスだ。期間は、2024年3月から2025年3月までだ。 ここまで読んで「なにそれ?」と思う人もいるだろう。かく言う筆者も、「JR西日本グループがメタバースを活用し始めた」という情報をキャッチしていたものの、50代という年齢のせいか、その内容や面白さを十分に理解できなかった。 そこで筆者は、JR西日本ビジネスデザイン部のブースに行き、「バーチャル大阪駅長」(同部の事業推進課長兼XR推進室長)にその概要を説明してもらった。それでイメージがつかめたものの、その面白さがわからなかったので、実際にスマホを使って「バーチャル大阪駅 3.0」の世界に入ったら、その楽しみ方がようやく理解できた。 そこは、不思議な世界だ。SNS型メタバースアプリ「REALITY(リアリティ)」にログインすると、ライブ配信のリストが表示され、それぞれに多くの視聴者が集まっているのがわかる。自分なりのアバター(ユーザーの分身となるキャラクター)をつくり、「バーチャル大阪駅 3.0」の場内を歩き回ると、配信者が立てるステージが複数あるのがわかる。つまり、ユーザーたちがそれぞれ自分の顔をさらすことなく、配信や視聴を楽しめる「場」があるのだ。 「バーチャル大阪駅 3.0」は、「REALITY」で提供される「ワールド」と呼ばれる「場」の一つ。それを見て、「バーチャル大阪駅長」が話していた「われわれは場所を提供しているだけ」という言葉の意味を理解できた。
駅のシンボルとなる広場を活用
「バーチャル大阪駅 3.0」のモデルは、大阪駅の「時空(とき)の広場」だ。ここは同駅のシンボルであるスペースで、ホームや南北連絡橋の真上にあり、金と銀の大時計が立っている。現在は床面の一部に人工芝が敷かれており、平日の夕方以降や休日には多くの人が集まり、芝生の上に座っている。関西の鉄道網の中心にあるので、アクセスのよさは申し分ない。 つまり、JR西日本グループは、実在する「時空の広場」を利用して、リアルでもバーチャルでも人が集える空間を創ったのだ。筆者は、バーチャルの「時空の広場」を歩いたあと、リアルの「時空の広場」に足を運んだら、独特な親しみを覚えた。同じ体験をしたいと思っているユーザーは、きっといるだろう。 リアルとバーチャルを融合し、にぎわいを創る試みも行われている。たとえば本年12月7日・8日には、大阪駅周辺の梅田地区の冬のイベント「UMEDA MEETS HEART 2024」の一環で、「バーチャル大阪駅 3.0」のVライバー(配信者)による同イベントの宣伝動画が、大阪駅2階のアトリウム広場の大型ビジョンで放映された。リアルの大阪駅で、推しの配信者に会えるのだ。 同じことを首都圏の駅で実現するのはむずかしい。そもそも「時空の広場」のような駅を象徴する空間がない。厳密に言うと、新宿駅や東京駅に広場があるものの、いずれも駅のシンボルにはなり得ていない。逆に言うと、大阪駅だからできるのだ。 さて、先ほど紹介した「バーチャル大阪駅 3.0」には、国内のみならず海外からも人が集まっている。来場者数は、2024年3月の「開業」から約半年でのべ2,000万人を超えた。 意外なのは、来場者数の多さだけでなく、その内訳だ。年齢別では18~24歳の比率が全体の7割に迫り、男女比はおおむね1:2で女性の方が多いことは、実際にプレイして納得できた。ただ、約2/3が海外の人という結果に、筆者は驚いた。ここまで多いと、海外に「大阪駅に行きたい」と思う人がいても不思議ではない。