エース石川祐希の<原点>。バレーとバスケで悩んでいた小4のあの日。母がやっていたのでバスケ部に入ろうと思ったけれど…
◆「将来バレーボール選手になりたい」と思ったことはなかった… 「何部に入る?」 一緒に少年野球のチームに入っていた友達に相談した。 バスケか、バレーか。 迷っていたけれど、僕たちはバレーボールを選んだ。 あのとき、なぜ、僕はバレーボールに決めたのか。 振り返ってもよく覚えていない。 でも、迷いながらも心のどこかで決めていた気がする。 なぜなら、僕はもともと何かを決めるときには「こうしたい」という意志を根っこにもっているタイプだからだ。 とはいえ、1人で「こうする」と決めるには自信がないから、仲の良い子に「どうしようか?」と相談しながら、「バレーにしない?」と、自然にもっていったような気がしている。 もう1つ、僕がバレーボール部を選んだ理由があるとしたら、当時の矢作南小バレーボール部が強かったからだ。 正直にいうと、小学生のころの僕は、「将来バレーボール選手になりたい」と思ったことなど一度もなかった。
◆小学生の自分を振り返って思うこと… ここぞというときの集中力には自信がある。 そして、必要だと思えば何でもやる。 その反面、本当にこれが必要かな、と思うことは積極的にやらないのも僕の性格だ。 例を挙げるならば、小学生のころの夏休みの宿題がまさにそう。 コツコツ地道に毎日これだけやる、と決めて取り組むのは苦手だった。 どちらかといえば、夏休みも終わるころになってから一気に終わらせるタイプ。 絵日記や、アサガオの観察日記など、毎日やらなければならないものはやるけれど、 計算ドリルや漢字など、毎日やらなくてもいいものはやらない。 集中してやれば終わるとわかっていたし、小学生のころから塾や公文に通っていたので、もともと計算も苦手ではない。 ちゃっかり友達に見せてもらうこともあった。 宿題だけでなく、バレーボールも同じだった。 練習はもちろんちゃんとやるけれど、やらなくてもいい、と思うことはやらない。 たとえばバレーボールの基本技術として、始めて間もないころに教えられるオーバーハンドパスもまさにそうだった。 おでこの前に両手で三角形をつくって、膝を曲げ、腕を伸ばしながら力を前に伝えてボールを出す。 基本中の基本ではあるけれど、練習を重ねるうちに、膝を曲げることが本当に必要かな、と思うことが増えた。 むしろ、かたちばかりを気にしなくても、できることはある。 オーバーハンドパスの目的は、目指す場所にちゃんとボールを返すこと。 それならばかたちにこだわるよりも、自分がやりやすい、いちばん返しやすいかたちでやったほうがいいな、と子どものころから考えて実践してきた。 指導者によっては、「どうして膝を曲げないんだ」と怒る人もいるかもしれない。 実際僕も注意をされることもあったけれど、ある程度は自分のやり方でやってきた。 もちろん、まったく膝を曲げないというわけではなく、オーバーハンドパスをするときも少しは膝を曲げた。 自分がいちばんやりやすい、ボールを返しやすいやり方を考えて、自然にできるように練習した。 宿題をコツコツやるのは苦手だったけれど、自分が納得して取り組むバレーボールの練習を続けることは、少しも苦ではなかった。