なぜ大谷翔平はこれほどまでに愛されるのか? 一挙手一投足が話題を生む、新しいタイプの国民的スーパースター像とは<RS of the Year 2023>
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、ラグビーワールドカップ、サッカー・FIFA女子ワールドカップ、世界陸上、バスケットボール・FIBAワールドカップ……数々の世界大会が開催され、多くのアスリートの活躍に心揺さぶられる1年となった2023年。一方で、小野伸二さん、石川佳純さん、岩渕真奈さんなど、長く第一線で競技を背負ってきたレジェンド選手たちが現役引退を決意したことも印象的な一年となった。そこで、結果や勝敗だけではないスポーツの本質的な価値や魅力を伝えてきた『REAL SPORTS』において、2023年特に反響の多かった記事を振り返っていきたい。今回は、大谷翔平選手が愛される理由について深掘りした考察記事だ。 (2023年7月21日公開) =================================
大谷翔平選手のことを知らない、好きじゃないという人は果たしてどれほどいるだろうか? 間違いなく歴史に名を残す偉大なトップアスリートでありながら、その言動からは誠実な人間性があふれ出て、時折やんちゃでお茶目な一面も垣間見せる。まさに誰からも愛されるキャラクターを持つ国民的スーパースターだ。そんな大谷選手の一挙手一投足に見る、現代のアスリートに求められている新しいスポーツ選手像とは? (文=花田雪、写真=AP/アフロ)
「大谷翔平を知らない」人はほとんど存在しない
国民的スーパースター。 こんな言葉は、もはや死語だと思っていた。娯楽が多様化し、エンタメの頂点が“テレビ”ではなくなって等しい令和の時代。誰もが顔と名前を知っていて、誰もが魅了される――。そんなスターは、もう現れようがない。 かつて、野球界にはテレビの普及と時を同じくして長嶋茂雄、王貞治というスター選手が現れ、まごうことなき“国民的スーパースター”として日本中を熱狂させた。 ただ、現代社会は違う。プロ野球が日本でもっとも人気のあるスポーツの一つであることは変わらないが、昭和の時代と比べ、その人気はやはり局地的だ。三冠王・村上宗隆も、沢村賞投手・山本由伸も、最年少完全試合投手・佐々木朗希も、国民誰もが「顔と名前が一致する存在」かと言われたら決してそうではないだろう。 ただ、大谷翔平は違う。MLBのロサンゼルス・エンゼルスでの活躍ぶりはわざわざここに書くまでもないだろう。特にア・リーグMVPを獲得した2021年からの3年間は、テレビ、ネット、SNSといった各媒体で大谷翔平の名前を見ない日はないほどだ。 個人の趣味・趣向が多様化して「野球に興味がない」「野球は見たことがない」という人は多いが、「大谷翔平を知らない」人はほとんど存在しない。 先日、地上波のテレビで「大谷翔平女子」なる言葉が特集されていた。野球そのものではなく、大谷翔平個人に魅了され、彼のプレーや一挙一動を追いかける女性が急増しているという。 そう、大谷翔平という存在はすでに、野球そのものを凌駕する域にまで達しているのだ。