東京メトロ、上場で鉄道依存の脱却なるか 不動産など強化へ 都営地下鉄との統合見えず
地下鉄を運営する東京メトロが23日、上場した。年間の乗降客数は20億人を超え、JRを除く全国の私鉄でトップ。ただ、運輸事業への依存が強く、市場からは不動産を含む非運輸事業の拡大などを求められている。一方で、長年の懸案となってきた都営地下鉄との統合の議論は先送りされる可能性がある。 【グラフでみる】鉄道各社の運輸部門の売上高比率 今回の上場で東京メトロ自体の資金調達は行われないが、山村明義社長は23日の記者会見で、上場を「一層の経営改革を進めるための基盤づくり」と位置付けた。経営の自立性、透明性を高めることに加え、業績が株価に反映されることで社員の士気の向上や人材確保などにプラスになるとみている。 投資家が期待するのは不動産など非運輸事業の拡大だ。2024年3月期決算では売上高3892億円のうち運輸事業が9割を占めた。競合と比べ高い比率で、山村氏は新型コロナウイルス禍に触れ、「鉄道一本足だと、乗客が激減するとかじ取りが難しい。『非鉄』の強化が必要だ」と力を込める。 地下鉄の性格上、地上に広大な土地は所有していないが、小田急電鉄などと組んで新宿駅西口地域の再開発を進めており、他社との連携もカギになる。 運輸事業の業績は好調だ。銀座線、丸ノ内線といったドル箱路線を抱え、23年度の乗降客数は23億人を超え、2番目に多い東急を倍以上引き離している。30年代には有楽町線、南北線を延伸する計画で、乗降客の上積みを図る。 路線網を巡っては、運賃を安くするなど乗降客の利便性を向上するため、都営地下鉄と統合する構想がくすぶる。ただ、都営地下鉄は穴埋めできていない赤字の累積を示す累積欠損金が2千億円規模に達し、株主に反対される懸念も強い。山村氏は「今はそれぞれの企業体として頑張っていく段階。今回の上場のテーマにはなっていないと考えている」と述べた。（織田淳嗣）
