園児が育てた野菜で給食 長野で「食農保育」の取り組み
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園児が米や野菜を育て、みそも作って給食に充てるユニークな「食農保育」を行う保育園が長野市にあります。自前の給食は今年度、農水省の局長賞を受賞。こんな取り組みに入園希望が引きも切らず、「ここに住むなら安心」と地元で3人、5人と子どもを産む世帯も。園長は「あれこれの少子化対策より、命を大切にする保育こそが、子どもが増える地域をつくり出します」と話しています。13日に園庭で開かれた「収穫祭」をのぞいてみました。
「バケツじゃ米作りは無理」の助言から
長野市高田の市街地にある社会福祉法人・出光会の「上高田保育園」(園児126人・職員30人)。藤原睦明(むつあき)園長(60)はかねて「土と水と太陽で子どもたちを育てたい」と園児とともにバケツで稲を育てたり、園庭に野菜畑を作るなどしてきました。 「米作りはバケツじゃ無理だよ」という農家の助言もあって、8年ほど前に郊外の同市中条で農園を経営する吉澤政人さん(65)から田んぼなどを借り受け、年長児や保護者と現地に通いながら野菜や米作りを始めました。 毎年100キロほど収穫する米やジャガイモなどの野菜は保育園の給食の食材とし、現在では「2か月分ぐらいの給食は自給できていると思う」(藤原園長)。園児は大豆からみそも作っており、来年は原材料の大豆の栽培にも挑戦する予定です。
地元野菜使った給食が農水省局長賞
園児らが作った夏野菜の「やたら」と呼ばれる郷土食を添えた「信州の夏野菜やたら給食」は、今年度の地産地消給食等メニューコンテスト(都市農山漁村交流活性化機構主催)で農水省食料産業局長賞を受賞。するっと口に入りやすい出汁しょうゆ風味の「やたら」を豆腐ハンバーグにかけ、発芽玄米入りご飯、トマト、エノキのすまし汁などとともに食べます。 農地を提供している吉澤さんによると、毎年の田植えや稲刈りなどには年長児と父母ら70人ほどが参加し、にぎやかに農作業に打ち込みます。今年は悪天候で稲刈りは中止でしたが、かかしに感謝する「かかしあげ」がありました。「毎年来る子どもたちの様子はいろいろ。年によっては作業の最後に着衣のまま田んぼにダイビングする元気な子供もいます」。 保育園の取り組みを各地に発信してきた農水省関東農政局長野支局の吉田喜美夫消費・安全チーム主任広域監視官は「自分たちで野菜やお米を作っている子どもたちは、給食をもりもり食べます。どこかから来たご飯ではなく、自分が手を掛けて育てたからなのでしょうね。この取り組みはこれからも続けてほしい」と話しています。