平城京、難波宮「見える化」進む…AR・VR汎用アプリでデータ維持管理容易に
遺跡にあった建物などを「見える化」する手法として、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)がある。多くの自治体が独自開発したアプリで取り組んできたが、アプリの維持管理がネックになっていた。奈良文化財研究所(奈文研)などは11月から、汎用(はんよう)のアプリを使って実施し、注目を集めている。(辰巳隆博)
奈文研が利用しているのはARやVRの作品を制作できるアプリ「STYLY(スタイリー)」で、平城京全域のCGを公開している。奈良市役所に設置された「平城京復元模型」をもとに、東西8.3キロ、南北6.4キロの都を1000分の1サイズのCGにした。
スマホなどの画面で見られ、当時の景観の想像や修学旅行の事前学習に役立つ。実際に平城京跡を訪れ、CGを拡大して建物の大きさを実感することもできる。
奈文研によると、建物を復元するよりも安価で簡単に遺跡を可視化でき、2010年代から多くの自治体が独自のアプリを開発してきた。しかし、独自アプリでは、スマホの基本ソフトウェア(OS)のアップデートに合わせ、アプリを更新する必要がある。
奈文研が2015年に実施した自治体の調査では、アプリの「更新・保守」について回答があった21件のうち、OSのアップデートに伴って更新したのは7件しかない。使えなくなっている例もあった。
自治体には専門の職員がおらず、外部委託の予算確保も難しいためという。奈文研文化財情報研究室の高田祐一・主任研究員は「国の補助金頼みで始めたものの、維持管理の予算が付かずにデータが眠ってしまっている。STYLYを使って再活用するよう呼びかけている」と語る。
大阪歴史博物館も11月から難波宮のARとVRをSTYLYで公開している。大阪市教育委員会が作成したものの、2013年4月からアプリが更新されず、活用されていないCGを改良して作り直した。
博物館は難波宮跡内にあり、館内外5か所に設置されたQRコードをSTYLYで読み取ると、難波宮のイメージが画面に映る。10階から見下ろせる史跡公園に画面を合わせると、難波宮全体のCGが浮かび上がる。