皮膚をさするなど手足の刺激でも脳は活性化/医療ジャーナリスト・安達純子
「~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防」<24> 歩行習慣は、脳のマイネルト基底核から大脳の中へ広がる神経によって、アセチルコリン(神経伝達物質)を増やし、結果として、高次機能をつかさどる大脳皮質や海馬の血流を増やし、脳の神経細胞を守ることにつながる。しかし、加齢に伴い膝や腰が痛くて「歩くのは無理」という人もいる。また、雪深い冬場は歩行が困難なこともある。どうすればよいのか。 「歩行ができなくても、私たちの研究では、皮膚や筋肉、関節に刺激を与えると脳のアセチルコリンが増えることを明らかにしています。特に手や足への刺激は効果的です」とは、東京都健康長寿医療センター研究所自律神経機能研究室の堀田晴美研究部長。歩行による脳のアセチルコリン増加など、さまざまな研究成果を上げている。 皮膚をゆっくりとさするような軽い刺激でも、大脳皮質でアセチルコリンが放出され、血流が増加するという。たとえば、腕や脚に保湿クリームを塗るような軽い刺激でも、脳のアセチルコリンは増える可能性がある。 「顔への刺激でも脳のアセチルコリンは増えます。女性は化粧品を顔に塗って刺激する機会が多いと思いますが、男性も、ひげ剃り後の保湿剤などで顔の皮膚に刺激を与えると、アセチルコリンの増加が期待できます」 乾布摩擦も役に立つ可能性はあるが、真冬に上半身裸で行うと体温を極端に下げ、血圧を急上昇させるなど健康被害につながる恐れがある。無理のない範囲で皮膚に刺激を。