「民主主義の崩壊」兵庫県知事選、なぜ“陰謀論”が広まったのか。日本が「選挙×SNS」を対策できないワケ
◆日本で対策が難しいのは、大手SNS運営会社が「アメリカ企業」だから
選挙などでSNSを使って偽の情報を流布したり、影響工作をしたりするのは世界中で起きていることだ。どこの国でも、政治的な投稿に関連した「凍結」は問題になっており、運営側の対応は常に議論を呼んでいる。アメリカでは、2016年の大統領選でロシアから大々的に偽情報工作が行われ、2024年の大統領選でも中国のSNSサイバー工作「スパムフラージュ」が問題になった。 アメリカであれば、NSA(国家安全保障局)やCIA(中央情報局)などがSNSを使ったライバル国からのサイバー攻撃に対して反撃・撃退工作を実施する。そして国内の偽情報対策には、日本の国会に当たるアメリカ連邦議会がSNS運営企業経営者を公聴会に呼び出し、何らかの対策をするようにとプレッシャーをかけたりする。 ところが日本では、ほぼ全ての大手SNS運営会社がアメリカ企業ということもあり、責任者を呼び出して対応させることは難しい。少し前に話題になった「著名人を使った詐欺広告の問題」でも、アメリカのSNS運営側はほとんどまともに対応しなかった。その理由にはアメリカ企業側が日本のユーザーを軽視していることも影響している。結局、日本政府としてもSNSの問題は放置するしかないのが実情であり、この点において、日本ではSNSの「風紀」を守りコントロールするのは容易ではない。
◆斎藤氏「SNSは1つの大きなポイントだった」
今回の知事選の期間中には、SNSで稲村氏を批判する「陰謀論」なども拡散されていたという。要は「偽情報」を拡散させている人がいたということだが、実はそれは稲村氏側も斎藤氏側もお互いさまで、どちらの陣営にも偽情報をばら撒く人たちはいたという。ただ斎藤氏陣営が組織的に偽情報をばら撒いたという事実は、現段階では確認されていない。 とはいえ、SNSが選挙の結果に大きな影響を与えたのは確かだ。斎藤氏は、結果を振り返り「SNSなどを通じて、駅での活動に集まってくれる人が少しずつ増えていった。SNSは1つの大きなポイントだった」と語っている。事実、NHKの出口調査では「投票する際に何を最も参考にしたか聞いたところ『SNSや動画サイト』が30%と、テレビや新聞よりも多くなり、このうちの70%以上が斎藤氏に投票したと答えています」という。