46年逃亡の大坂容疑者?逮捕 「公安警察」の仕事とは?
どんな組織で職務なの?
公安警察の組織は、公開情報によれば、最大組織の警視庁公安部を始め、各道府県警、所轄署に至るまで、規模こそ異なれ、同様の職務を担当する機能が備えられています。その職務とは、極左暴力集団や右翼団体の捜査(公安課、係)と、外国政府による対日工作等を阻止するための捜査(外事課・係)、国際テロ関連の捜査などです。 公安警察には、容疑者の逮捕を最重要課題とする法執行機関という側面と、対象の組織を最終的には壊滅に追い込むことを目標に掲げ、その関連情報の入手に努めるという、いわゆる情報機関としての性格も持っていると考えられます。警察の情報収集活動はあくまで捜査のためという枠組みの中でのことといわれますが、最大の組織力を擁する警察の情報収集能力には定評があるといわれています。 しかし、一般論で言えば、米国や欧州などの先進国では、法執行機関(強制捜査権を持つ)の機能と、情報機関としての機能を明確に分けていますので、日本の例はむしろ特殊な部類に属するかもしれません。 公安警察の職務の中でも、主に外事課が担当する敵対国によるスパイ活動を阻止するための捜査は注目に値します。 スパイ摘発という一見スリルのある捜査は、一般人の目にはまるで映画や小説のように映るかもしれませんが、スパイの証拠をつかみ、関係者の逮捕にまで漕ぎつけるためには、長期にわたって内偵を続け、他人には口外できない苦しい戦いがあるはずです。 すなわち、相手の外国人は、それぞれの母国で長年諜報員としての訓練を受けたプロ中のプロだからです。公安調査庁にも防諜(カウンター・インテリジェンス)を行う部署は存在しますが、マンパワーの問題から、公安警察のように人員を動員して外国のスパイ活動をあぶりだすという作業には自ずと限界があります。 スパイ天国と言われて久しい我が国ですが、現在国会で審議されている組織犯罪処罰法改正案(共謀罪の成立要件を改め「テロ等準備罪」を新設する)を含め、スパイやテロを取り締まる法律をいつまでも持てないのであれば、危険な敵対国やテロリストにとってこれほど安心して活動できる国はほかにないでしょう。公安警察の負担軽減も少しは考える時期にきているのではないでしょうか。 -------------------------------------- ■安部川元伸(あべかわ・もとのぶ) 神奈川県出身。75年上智大学卒業後、76年に公安調査庁に入庁。本庁勤務時代は、主に国際渉外業務と国際テロを担当し、9.11米国同時多発テロ、北海道洞爺湖サミットの情報収集・分析業務で陣頭指揮を執った。07年から国際調査企画官、公安調査管理官、調査第二部第二課長、東北公安調査局長を歴任し、13年3月定年退職。16年から日本大学教授。著書「国際テロリズム101問」(立花書房)、同改訂、同第二版、「国際テロリズムハンドブック」(立花書房)、「国際テロリズム その戦術と実態から抑止まで」(原書房)