佐藤琢磨がインディ500で輝く可能性は?
インディカーシリーズは、F1ほどチーム間格差は大きくないが、優勝しチャンピオン争い出来るドライバー、チームはやはり限られている。昨年チャンピオン争いをしたのはペンスキー、チップガナッシ、そしてアンドレッティという名門3チームで、02年以来優勝のなかったAJフォイトのチームを勝利に導いたという点において、琢磨の実力は大いに評価された。言わば、トロロッソやザウバーが、フェラーリやマクラーレンを倒し優勝したと思えば良いだろう。 しかも琢磨は第4戦ブラジルで最終ラップまで優勝を争って2位入賞!ランキングトップとなって、インディ500を迎える。アメリカのファンやメディアも、ある意味番狂わせな琢磨の活躍を楽しんでいるようだ。 伝統のインディ500は5月26日に決勝を迎える。1911年に始まったこのレースは103年目を迎え、その歴史はF1選手権より長い。アメリカ最大のモータースポーツイベントであるこのレースは、決勝日には30万人以上の観客を集める。その規模の大きさは間違いなく世界一だ。平均時速が220マイル(350km/h)を越える異常な速さ。全33台がスタートするその瞬間は圧巻だ。 インディカーシリーズとしては本年16イベント、19レースが予定されているが、その中でもこのインディ500は別格。この歴史あるインディ500の1勝の重みは何にも変えられないのである。 “500”と名の示す通り、レースは500マイル、約800km 3時間の長丁場のレースだ。コンディションも変われば、アクシデントも発生する。その中をいかに生き残れるかが上位進出の鍵だ。昨年予選は後方だった琢磨も、ピット作業ごとにコンディションに合わせマシンを調整しレース中盤にはトップに立った。レース巧者の琢磨らしいレース展開だったが、今年も上位進出は決して夢ではないし、琢磨にも勝機もあろう。 しかし100年以上の歴史があるインディ500の中で幾度インディ500に挑戦しても勝てないベテランドライバーもいれば、参戦2~3年目の若いドライバーが勝つこともある。それがインディ500なのだ。インディ500に必要なのは絶対的なスピードはもちろんだが、まさに勝負を左右するような“運”が必要でもある。当たり前のようだが、アクシデントに巻き込まれないこと、マシンにトラブルが起きないこと、そしてミスを犯さないこと……。インディ500の勝利に最も必要なのは勝利の女神の微笑みなのかもしれない。 昨年の琢磨の活躍を知るファンは、3時間の間TVの前から離れることは出来ないだろう。 (文責・松本浩明/モータースポーツ・フォトジャーナリスト) 千葉県生まれ。JRPA会員(日本レース写真家協会会員)大学卒業後出版社勤務。モータースポーツの撮影・取材を始め93年フリーランスとなり渡英。F1、ルマン、ツーリングカーなど海外レースを精力的に追い続ける。佐藤琢磨選手との出会いは98年から。2010年からはインディカーシリーズも撮影取材開始。著書に「佐藤琢磨・終わらない夢」(三栄書房)など。