LGBT先進国アメリカ トランプで分断加速も未来は明るい?
養子縁組で家族になったゲイ男性
ブルックリン在住のピーター・ライダーさんは、グレンさんとともに3人の子どもの父親だ。生後6か月で亡くなった長男のベン、6歳の長女サラ、5か月半違いの次男カルビン、1歳の次女シルビアとは養子縁組を通じて家族になった。4人とも「幸運なことに」(ピーターさん)、初対面は出産直後の病院だったという。長男、次女はアリゾナ州、長女、次男はフロリダ州から迎えた。 候補となる女性たちには、自分たちが同性カップルであることを最初からオープンにしていた。中絶をしないで出産し、養子に出す選択をするということは、敬虔なクリスチャンで、ゲイを問題視する可能性の高い人たちかもしれないという懸念もあったが、杞憂に終わった。これまで20~30人の候補と会ってきたが、明らかに違和感があるというそぶりをみせたのは、1、2人だけだったそうだ。「女性たちは養子に出すことになる子どもの幸せをただ願い、そのためによい家庭に引き取られることを望んでいました。最終的に母親の思いはそこに行き着く。大事なのは子どもの幸せなんです」 しかしここにも「宗教例外」の波が押し寄せている。2018年の時点で、LGBTの人びとへの里子の仲介について、児童福祉サービス事業者が「宗教的」または「道徳的」な信条を理由に拒否することを、南部や中西部の10州が認めており、養子縁組でも同じ傾向がある。実は今夏、連邦レベルでも動きがあった。宗教や道徳を理由に養子縁組や里親仲介サービスを拒否する事業者にも、連邦政府による助成が義務づけられる改正案が議会に提出されたのだ。ただこの案は、数百にも及ぶ市民団体の反対運動もあって可決されることはなかった。 ピーターさんは「家族をつくりたいと願っているLGBTの人たちと、我が子に幸せになってほしいと願っている母親の間に立つ事業者が、いわば独りよがりにつながりを断ち切っているかもしれないということですよね。それは全く理にかなっていないし、とても不幸なことだと思います。何より生まれてくる命にとって」と話す。 米社会で公共サービスの私営化がますます進む中、民間事業者に宗教例外が認められることで、LGBTの人びとのための社会的サービスへのアクセスが徐々に縮小している傾向を、ピーターさんは憂慮していた。