英 マッチズ が終了:マルチブランドECに問われる「ブランドとの関係性」
オンライン小売のマッチズ(Matches、旧・マッチズファッション/Matches Fashion)は昨年末、英国の小売企業フレイザーズグループ(Frasers Group)に買収されたが、新オーナーのもとで3カ月と持たなかった。フレイザーズ・グループは3月8日、この事業を閉鎖すると発表した。 12月にバーゲン価格で買収されたマッチズは、買収前から最後の足掻きをしているようだった。そして、フレイザーズが発表した新たな声明からも明らかなように、マッチズを再生させるもっともらしい方法は見つからなかった。500人を超える従業員の半数以上が即刻解雇される。 「フレイザーズ・グループがマッチズを買収して以来、マッチズは一貫して事業計画の目標を達成できず、グループからの支援にもかかわらず、重大な損失を出し続けている」とフレイザーズからの声明が米グロッシーに寄せられた。「マッチズの経営陣は、事業を安定させる方法を見つけようとしてきましたが、事業の再構築には非常に大きな変化が必要であり、継続的な資金の需要は、当グループが実行可能と考える金額をはるかに超えることが明らかになった」。
独自eコマースを立ち上げるブランドが増加
マッチズは2017年にエイパックスパートナーズ(Apax Partners)によって10億ドル以上の評価額で買収されたが、フレイザーズが買収した時点では、この苦境にある小売業者に支払った金額はわずか6000万ドル(約88億円)だった。マッチズの主な競争相手であるファーフェッチ(Farfetch)が、韓国のホールディングス企業クーパン(Coupang)にバーゲン価格で売却された数日後の急落だった。 両社の売却は、ファッションにおけるマルチブランドeコマースの大きな転換を告げるもので、ブランドがD2Cやほかのチャネルに重点を移すなか、このカテゴリーは苦戦を続けている。昨年は、独自のeコマース・チャネルを構築するラグジュアリー・ブランドが増加し、たとえば、エメレオンドレ(Aimé Leon Dore)やガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)は、Shopify(ショッピファイ)を利用したeコマースストアを運営している。また、ラグジュアリーブランド以外では、フットロッカー(Foot Locker)のようなマルチブランド小売企業が苦戦を強いられている一方、取り扱いブランドは独自に成長している。 eコマース・ソフトウェア企業スワップ(Swap)の共同創業者サム・アトキンソン氏は、「オンラインのみで運営しているマルチブランド小売企業には、実店舗を前身に持つ小売業者にあるような特徴が欠けている。現実の世界において、差別化できるようなサービスや専門知識を提供することはできないし、ユニークなマーチャンダイジングの機会も、主要都市でテイストメーカー(流行を生み出す人)に接触する機会もない」と話す。