東京科学大・東海国立大学機構…国立大の統合、四つの事例で法人改革を見比べる
北海道国立大学機構 広域連携、農業支える
22年4月に行われた調印式。(左から)穴沢真大学総括理事、長谷山彰理事長、長沢秀行大学総括理事、鈴木聡一郎大学総括理事(北海道国立大学機構提供) 国立の単科大学3校が経営統合し、北海道国立大学機構が発足したのは22年4月。研究内容が全く異なり、しかも広大な北海道を縦に横断する統合を危ぶむ声もあった。だが、同機構の長谷山彰理事長は「ここまでの道のりは極めて順調だ」と自信を見せる。 統合したのは小樽商科大学(小樽市)、帯広畜産大学(帯広市)北見工業大学(北見市)の3大学。いずれも地元に密着し、名門校と言われる存在だ。 長谷山理事長は「北海道は日本で最も食料自給率の高いところ。本道だけで見たカロリーベースでの自給率は198%で他を圧倒する」と話す。3大学が北海道の一次産業を技術や経営などで支える重要な役割を担う。 一方、農家の数は年々減少の一途をたどっているが、「だからこそ私たち機構の存在がある。農家の人たちが収穫のための技術を覚えながら経営も勉強しスマート化を導入する。3校が連携する意義は大きい」(長谷山理事長)。4月には産学官金連携統合情報センター(IIC)が発足した。すでに始まっている教学・経営の両面における職員の交流なども軌道に乗せるため動き出した。 北海道は大学と地元地域との関係が密接なのも大きな特徴だ。大学が地域の拠点としての存在になり得る。「3校の連携を強め最終地点はオンリーワンの存在だ」と長谷山理事長は強調する。
東海国立大学機構 産学で社会課題解決
名古屋大学と岐阜大学による県をまたいだ法人統合から4年が経過した東海国立大学機構。松尾清一機構長は「外部資金は増加傾向にある。国の競争的補助金の獲得でも成果を上げている」と法人統合の効果を指摘する。 「それぞれの大学の強みを生かしてこそ統合の真価を発揮できる」(松尾機構長)とし共創を基本とする。両大学の強み、シナジーを生かすため、東海機構は連携拠点の設置など各種支援を矢継ぎ早に行ってきた。 両大学の強みを生かした研究活動の一つとなる「糖鎖生命コア研究拠点(iGCORE)」が進めるプロジェクトは、文部科学省の大規模学術フロンティア促進事業に採択された。核酸やたんぱく質に次ぐ「第3の生命鎖」といわれるヒトの糖鎖研究で世界に先駆けた取り組みに期待が高まる。ハイパーカミオカンデなども採択された同事業とあって研究に加速がついている。 産学連携も活発化している。5月には産学連携オープンイノベーション拠点「TOIC」を完成。続く、7月に中部経済連合会と共催した脱炭素がテーマのシンポジウムは、オンラインを含めて500人近くを動員。中経連から「今後は具体的な課題を立てて議論を進めたいとの声もいただている」(同)という。 「10年後に、どんな大学システムになっているかを今こそ考える時だ」(同)と、社会の未来を支える大学のあり方を見据える。