最高の5つ星は六連星の上で燦然と!SUBARUクロストレック/インプレッサ・令和6年度自動車アセスメント ファイブスター大賞表彰式 会場レポート
NASVAにお願したいふたつのこと
試験はトランスミッションがN(ニュートラル)、エンジンはかかっていない=イグニッションだけがONのエンジン停止状態で行なわれる。しかし事故は普通、一般路上で起こるものだ(あたり前だ)。自分から何かの間違いで相手に向かってぶつかる、信号待ちのときに向こうから突っ込んできた・・・このとき、エンジンは始動中であると考えてまちがいない。 ならば衝突試験もエンジン始動状態で行なうべきではないだろうか。 事故の形態は千差万別だが、現在の試験方法は、キャビン変形量や乗員の傷害値を解析することはできても、エンジンがかかっていないから本当の意味での事故再現にはなっていないと思う。 テレビの交通事故のニュース映像で、クルマが景気よく燃え盛る光景を目にすることが少なくない。いまのクルマは衝撃を受けると燃料ポンプが止まって燃料カットが行なわれる機能を有しているにもかかわらず、だ。事故形態によってはやはり何らかの理由で炎上するのである。もしエンジン始動状態で衝突試験を実施すれば、車両火災に至るプロセスをも解析することができるのではないか。 55km/hや64km/hなら、マニュアル車なら4速か5速、CVTも含むAT車ならシフトはDで、エンジン回転は2000~2500回転あたりだろう。この状態でクルマをぶつけるのが本当だと思う。衝突試験後にクルマがうまく火を起こしてくれればの話だが、どのような理由で発火ないし引火し、どのような経路で火が伝わって炎上に至ったかの道すじがわかればそれが車両開発に活かされ、事故後の車両火災の可能性を減らすことができる。 いろいろとご都合があるだろうし、もしかしたらエンジン始動時のフルラップ、オフセット、側突試験用と、車両を倍の数だけ買わなければいけなくなるかも知れないが、検討してもらえたらと思う。 もうひとつは、後ろから追突されたときの後席乗員の保護性能の公開だ。 ビッグキャビンを誇るハイト型や3列シートのミニバンor SUVが全盛のおり、私が心配しているのは2列車なり3列車なり、最後列シート位置と車両最後部が極めて近いクルマの、後部からの衝突安全性だ。後席を最後部までスライドさせるとヘッドレストがリヤガラスに接触せんばかりのクルマだってある。軽自動車のハイト型が信号待ちのとき、大型トラックが後ろからぶつかってきたときのことを思うとゾッとする。その意味でリヤオーバーハングが荷室になっているセダンやステーションワゴン型が後席の安全度は高いと思っているし、いま売られているクルマだってそれなりの設計はなされているのだろうが、クルマは前に進み、後ろに下がると同時に、停まっていても否応なしに前からぶつけられるだけでなく、後ろから追突される可能性だってあるのだ。 前方向の試験公開だけでなく、フロントと異なり、エンジンルームのようなクラッシャブルゾーンが僅少のハイト型やミニバンの、後ろ方向の衝突試験&公開も実施してもらえれば自動車アセスメントの存在意義はより高まると思う。 以上、NASVAへのお願いを添えながら、令和6年度自動車アセスメント・ファイブスター大賞受賞式の様子をお届けしました。
山口 尚志