マクラーレン「アルトゥーラ スパイダー」を峠と高速で試す…エキゾーストサウンドも心地よく「マン・マシン」の一体感がハンパない!
車両重量の差は感じられなかった
と、まずはここまでの基礎知識を復習したところで、さっそく新たに追加されたアルトゥーラ スパイダーのステアリングを握る。参考までにスパイダーの車重は、乾燥重量で1457kg。これはクーペと比較して62kg増という数字だが、700ps級のパフォーマンスを持つスーパースポーツにとって、この重量差はオンロードにおいてはまったくハンデとは感じられなかったことを最初に報告しておきたいと思う。 フルオートマチックのRHT(リトラクタブル・ハード・トップ)は50km/h以下であれば走行中でも開閉が可能で、そのプロセスに必要な時間はわずか11秒。オープンモデルとしての実用性は非常に高いと言っても、間違いではないだろう。
サスペンション自体の部分的な剛性も非常に高い
クーペとの剛性感の違いも、オンロードではほとんどそれを感じることはできない。カーボンモノコックのMCLAはつねに強靭な剛性感を披露し続けるし、フロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンクというデザインを採用したサスペンション自体の部分的な剛性も非常に高い。それが卓越した乗り心地とともに、これぞまさにマクラーレンの真骨頂ともいえるマン・マシンの一体感を演出してくれるのだ。 カーボンセラミックディスクにフォージド・アルミニウム・ブレーキキャリパーという組み合わせとなるブレーキは、ゴー&ストップの多い市街地では、慣れるまでは制動時にややぎくしゃくした動きを生んでしまったが、じっさいにワインディングロードなどでその性能をフルに使いたい時のフィーリングはさすがに見事だ。エレクトロ・ハイドロリック・パワーアシストを備えるステアリングの正確さも、コーナリング時には大きな魅力だ。 アルトゥーラでは、このスパイダーも含めシャシー・セッティングでは「コンフォート」「スポーツ」「トラック」の3つが、そしてそれとは独立してパワートレインのセッティングを「E」「コンフォート」「スポーツ」「トラック」の4タイプから選ぶことができる。 静かで快適なクルージングには、シャシーもパワーユニットもコンフォートモードがもちろん最適だが、モードをいずれもスポーツに移行すると、アルトゥーラ スパイダーは大きくその性格を変化させ、超一流のスポーツカーへと印象を変える。ただしインパネの上部にレイアウトされる、そのモード変更のスイッチは、個人的にはやや操作性に不満が残った。その位置や操作感が、いまひとつしっかり感じられないのだ。 試乗コースのメインに設定されていた高速道路上では、エアロダイナミクスの優秀さとともに、オープンクルーズ時の快適さをともに味わうことができた。100km/h程度のクルージングでは、オープン・スタイルでもキャビンへの風の巻き込みは軽微で、ミッドのエンジン、そしてエキゾーストシステムが奏でるサウンドも、より鮮明にそして魅力的に耳へと届けられるようになる。 スパイダーの追加で、完全に販売体制を整えたアップデート版のアルトゥーラ。そのコストパフォーマンスは非常に高い1台と評価してもよいだろう。
山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)