ホンダの自信作だった!? いいトコ取りの「コムスターホイール」ってナニ?
レース用に開発した「コムスター」
バイクが世に登場した1900年代初頭から、バイクのホイールはワイヤースポークホイールが主流でした(小排気量のコミューターやレジャーバイクは鉄製の「合わせホイール」もアリ)。そこに現代のロードスポーツ車で主流の、アルミニウムを鋳造して作ったキャストホイールが登場したのが1970年代の中頃です。 【画像】カッコイイ!「コムスターホイール」を装備したバイクをもっと見る(18枚)
こういったバイクの“最新パーツ”は、「レーシングマシン用に開発→市販車にフィードバック」というパターンが多いのですが、キャストホイールに関しては最初に市販車用のカスタムパーツとして登場し、標準装備が広まったのも市販バイクの方が先で、レーシングマシンは依然としてワイヤースポークホイールを採用していました。その最たる理由は重量で、当時のキャストホイールはかなり重かったのです。 そんな時代に独創性を発揮したのがホンダです。レーシングマシンで重要な軽さと最適な剛性を併せ持つ「コムスターホイール」を開発し、ヨーロッパ二輪耐久レース選手権のワークスマシンに装備しました。 コムスターホイールは、車軸周りのハブと、アルミ製の軽量なリムを「スポークプレート」で繋いだ革新的な構造を持ちました。このスポークプレートの板厚と、ハブとリムを結ぶ左右のプレートの開き角などによって、ホイールの剛性を任意に調整できるのも大きな特徴でした。 ちなみに、「コムスター」とは「Composite(合成)」と「Star(星型)」を合わせた造語で、ワイヤースポークホイールの軽さとキャストホイールの高い剛性など、それぞれのホイールのメリットを併せ持ち、星型をしているところから命名されました。
そしてホンダは「レーシングマシン用に開発→市販車にフィードバック」の図式通りに、コムスターホイールを市販スポーツバイクに投入します。最初に装備したのはホンダの「ナナハン」(=排気量750ccクラスのバイク)の代表機種である「ドリームCB750FOUR-II」です(1977年4月22日発売)。 じつはコムスターホイールの大きなメリットのひとつに「チューブレスタイヤの装着が可能」があります。既存のワイヤースポークホイールは、リムにスポークのニップルの孔が開いているため空気を密閉できず、タイヤチューブが必要でした。 ところが「CB750FOUR-II」は、せっかくのコムスターであるにもかかわらず、チューブタイヤを履いていました。その理由は……当時はまだバイク用のチューブレスタイヤが存在しなかった(存在する必要が無かった)からです。 ちなみに当時は、他メーカーが装備を始めたばかりのキャストホイールもチューブタイヤを履いていました。 そこでホンダは、タイヤメーカーと共同でバイク用のチューブレスタイヤを開発し、1977年12月10日発売の「GL500」のコムスターホイールに、世界で初めてチューブレスタイヤを装着しました。 チューブタイヤは釘などの異物が刺さった際に、チューブが裂けて空気が一気に漏れ出てパンクするのに対し、チューブレスタイヤは(刺さった異物が抜けなければ)急激に空気が抜けないため安全性が高く、応急的な修理も簡単です。 ワイヤースポークホイールの「スポークの増し締め」といった作業が不要なメンテナンスフリーに加え、安全性も高めたコムスターホイールは、ホンダのロードスポーツモデルの大きな特徴になりました。 そして大排気量車だけでなく、当時人気のあった原付スポーツから250ccや400ccスポーツなど多くの車種に広がっていきます。