ホンダの自信作だった!? いいトコ取りの「コムスターホイール」ってナニ?
1982年からは2ストロークV型3気筒の「NS500」、1984年からは2ストロークV型4気筒の「NSR500」へとマシンが進化して行きます。 そして最初の「NR500」から1985年の「NSR500」まで、細い帯板状のスポークプレートを持つコムスターホイールを採用していました。 この形状のホイールは「NSコムスター」と呼ばれ、レーサープリカの「NS250R」(1984年)に装備されたのは、当然の流れと言えるでしょう。NSコムスターを初採用したのは、前年の1983年12月に登場した「CBR400F」でした。
時間をかけ、慎重だったキャストホイールへの移行
ホンダは国内外のロードスポーツ車がキャストホイールに移行した1970年代後半~1980年代前半に、独自のコムスターホイールを発展させました。 しかし1982年4月に発売した世界初の水冷V型4気筒エンジンを搭載したスポーツツーリングモデル「VF750セイバー」およびアメリカンタイプの「VF750マグナ」にキャストホイールを装備します。 そしてホンダもキャストホイールに移行……と思いきや、すぐにそうとはなりませんでした。
セイバー/マグナのV4エンジンをベースに、スーパースポーツに仕立てた「VF750F」が1982年の12月に発売されましたが、ホイールはブーメランコムスターを装備していました。また前述したように、市販車のNSコムスターが登場したのは1983年です。 ホンダは1982年からツアラー系やアメリカンタイプにキャストホイールの採用を始めましたが、スポーツ度の高いロードモデルやレーサーレプリカには、依然としてブーメランコムスターやNSコムスターを装備していたのです。 そして1985年を過ぎた頃から、それらのバイクのマイナーチェンジやモデルチェンジ、そしてニューモデルの登場に合わせて、徐々にキャストホイールに移行して行きました。このタイミングはGP500ワークスマシンの「NSR500」が、コムスターからキャストホイールに変わった時期と重なります。 コムスターホイールは、それだけホンダにとっての自信作であり、こだわりを持ったホイール構造だったと言えるのではないでしょうか。
伊藤康司