『スオミの話をしよう』三谷幸喜監督 × 西島秀俊 インタビュー コメディとは日常からちょっと離れた豊かさである
ふたりが思う理想の女性像
ーー主要な登場人物みんなスオミが大好きですよね。三谷監督と西島さんそれぞれ理想の女性像をお聞かせいただけますか。あと、5人の男たちでいうとどのタイプが自分に当てはまりますか? 三谷 僕は意外とエンケン(遠藤憲一)さんタイプなので、叱られたい。 西島 叱られたいんですか(笑)。 三谷 もちろんデレがあってのツンですけど、叱られるのは嫌いではないですね (笑) 。 ーー西島さんはいかがでしょうか? 西島 当てはめて考えたことはないですが、コバ(小林隆)さんの役は当てはまらないと思います (笑) 。言葉が通じない女性と結婚するのは、ちょっと僕には難しいです。叱られたいわけではないですが、僕は女性に助言していただいて、導かれることが多いので、何かしらそういうものを求めているところはあるかもしれません。結構、いろんな意見を素直に聞いてしまうところもあると思います。 三谷 例えばレストランに行って注文するときはどんな感じなんですか? 西島 お任せですね。 三谷 決めてほしいみたいな。 西島 僕の注文も決めてもらえるんだったら決めてもらいたいです。 ーー監督は注文される際どういう感じですか? 三谷 僕自分で決められない、お任せ。AかBしかないっていう場合でも決められない (笑) 。
日常から少し離れたところにある豊かさを
ーーこの映画が観客にどんなふうに届けばいいな、という想いをそれぞれにお聞きしたいです。 三谷 僕は自分の作品を作るとき、現代日本を描くみたいな、リアリズムにあんまりこだわらなくて。僕が作るべきものは、日常からちょっと離れたもの。観てくださる方も日頃の生活とは全然違う世界の、とはいえファンタジーとかSFとかではなく、ちょっとだけ普段の現実とは違う世界の物語に没頭してもらいたい。 日常生活の辛さであるとか、そういったものを忘れていただけるといいなと常に感じています。だから僕の中で、それを一番端的に表すアイテムとして象徴的なのが靴なんですよ。僕のお芝居に出ている人は、みんな靴を履いていて、スリッパとか靴下にならないんです。 ーーそれはなぜですか? 三谷 スリッパや靴下ってすごく日常的な感じがするから。気づかない人もいるんですが、この映画も舞台は家の中だけど、みんな靴を履いてるんですよね。そこに僕なりのメッセージというか「これは日常を描いてるもんじゃないんだよ」っていう、ちょっとしたアピールがあるんですよ。 ーー西島さんはいかがでしょうか。 西島 いま世の中は暗いニュースも多いですよね。この映画は、劇場に行って、年齢問わず子どもから大人まで楽しく観られる映画なので、みんなで一緒に笑うひとときを過ごしていただきたいなと思います。コメディってものすごく豊かでないと面白くないものだと聞きます。この映画に関しても、衣装でも美術でもとても良質なものが提供されています。 それは観られる方の無意識に響くことでしょうけれど、笑うことの豊かさ、映像の中の物の豊かさに満ちていると思います。三谷さんもおっしゃったように、日常とちょっと離れた豊かさで作られている作品なんですよね。本物を使って、細部までこだわって美術を作り込んでいる映画なので、ぜひ豊かな時間を楽しんでいただきたいなと思っています。 三谷 逆に伺いたいんだけど、この映画は、一応ミステリーでもあるわけじゃないですか。ただどう考えてもあのスオミが悲惨な最後を迎えるとは思わない。実際に観てどう思いました? ーー謎解きが始まったとき、草野の部下役の瀬戸康史さんがその役回りなんだ、と思っていたら、西島さんがそれを否定し始める。これってこの後どうなるんだろう?と思ってワクワクしながら拝見しました。機会があって2回試写を拝見したんですけど、内容をわかった上で、もう1回見るとさらに違う面白さがあるなと。 三谷 いいですね、僕は俳優さんの芝居を観てほしいから映画を作っているので、1回目は筋だけを観てもらって、そのあとで2回目、3回目と観てほしいですね。ひとつのカットにたくさんの俳優さんが出てるから、いろんな人の表情とかを観て楽しむということもできる。 旦那たちは5人いるから、最低5回は観てほしいですね (笑) 。 西島 ミステリーの説明は難しいですけれど、実はヒントは冒頭から散りばめられているので、よく観ていただければ、正解にたどり着けるようになっています。1回目から正解を見つけ出せる人はもちろん見つけてほしいですし、見つからなかった人はもう1回最初から観ると「実はこの人は、このときあんなことをしていたんだ」ということが見えてきて、裏側というか、また別の視点から作品が見られます。 ぜひ5回ぐらい観てください(笑)。
otocoto編集部