『スオミの話をしよう』三谷幸喜監督 × 西島秀俊 インタビュー コメディとは日常からちょっと離れた豊かさである
神経質でちっちゃい元旦那・草野
ーー草野という役は、なぜ西島さんだったのでしょうか? 三谷 5人の男の中で、一番観客が感情移入しやすいのは草野だと思うんですよ。草野は変わった男ではありますけど、彼の気持ちもわかる。そういうお客さんと寄り添えるお芝居ができる俳優さんということで、西島さんにお願いしたし、それは正解だったと思いますね。 ーー脚本を書いていて、こういう西島さんが見たいと思って膨らんだところはありましたか? 三谷 僕は脚本を書く前に、西島さんのことをほとんど知らなかったから、西島さんご本人に当てた役にしたわけじゃないんですよ。草野って、相当神経質でどっちかというと嫌な男なんですけど、西島さんがどういう性格かとか脚本を書いているときは全然知らないから (笑) 。 西島 よかったです(笑)。 三谷 本当はそうかもしれないですけど (笑) 。ただそういう人物をやらせてみたいという、何かが西島さんにあったんですよね。実際、草野が面倒くさい男だからこそ刑事として真相にたどり着いたっていうのもある。そういう意味では、この草野というキャラクターを主人公にした刑事ものを作ってもいいぐらい成長してくれたなと思います。 ーー西島さんは草野の役作りをどのようにされたんでしょうか。 西島 かなり神経質なキャラクターなので、観客の方々がなかなか感情移入できないだろうなと思いながら役を作っていました。小さなプライドを隠せなかったり、他の元旦那たちよりも少しでも勝ちたいとか、ちょっとしたことが気になってしょうがなくて、言わなくてもいいことをつい言ってしまったりだとか、かなり嫌な男ですよね (笑) 。 もしかしたら僕の中にもある“小さいかも”と思う部分をちょっと強調して反映させて、それが少しでもチャーミングになればいいなと思ったんですが、出来上がりを見るとやはり感じが悪くて‥‥。狙いどおりといえば狙いどおりなんですけれど、なかなか共感してもらえないタイプかなと思っています。 三谷 自分の奥さんや付き合っている人の元彼氏に会うとだいたいあんな感じだと思う。 西島 でも、奥さんに何かしてあげるときに、あんなに「いや、俺がいないとダメなんだ」って言うんですよ(笑)。