『スオミの話をしよう』三谷幸喜監督 × 西島秀俊 インタビュー コメディとは日常からちょっと離れた豊かさである
ふたりが思う長澤まさみの魅力
ーースオミを演じられた長澤まさみさんの魅力について、お聞かせください。 三谷 ものすごく真面目な方ですよね。 西島 そうですね。それでいて、いろんな魅力を持ってらっしゃる。様々な役を演じることができて、それぞれがチャーミング。まさにスオミみたいです。三谷さんは、この話を長澤さんのために書いたのではないですか? 三谷 他の女優さんだと、ちょっと考えにくいなというのはあります。彼女のジメジメしていない感じが、僕はすごく大好きで。ただ真面目な方だから、ものすごく悩まれて、反省されてるんですよ。僕がOKを出しているのに「本当にいいんですか?」みたいな。自分としては不本意な感じを残しつつ、先へ進む方だから、やり切った感がないんですよ、ご本人はね。あんまりイメージにないかもしれないですけど、内省的で、本当に一生懸命。逆に「長澤さんの満足できるまでやっていいですよ」というと、延々にやれる方なんじゃないかな。 西島 長澤さんは、普段は穏やかで物静かで、ふわっとした方なんですよね。でも芝居に入ると本当に華があって、バッと明るくなるような演技をされる。そのギャップがすごく魅力的ですよね。 三谷 彼女が5人の男たちを前に一人語りをするところ、あそこが物語のクライマックスでもあるし、長澤さんもすごく力が入っていて。何回もリハーサルもやったし、あの日はすごく集中していたし、緊張もしていたと思うんですよね。話しかけたりすると集中切れちゃうから、僕もなるべく遠目で見ていて寄らないようにしてたんだけど。僕が席を立ったら、向こうから来られて、何を言うのかなと思ったら、緊張した末に「口内炎ができちゃった」って見せてくれて(笑)。 ーーお茶目な方ですね。 三谷 あんまり他人の口内炎見たことなかったんで、びっくりしたけど (笑) 。お茶目でありつつ、自分の緊張もほぐすし、周りの気持ちもほぐそうとされたんだと思うんだけど、そういうことをされる方です。 ーー西島さんが感じられた、長澤さんの印象的だった一面はありますか? 西島 やっぱりそのクライマックスのシーンはすごく印象的でした。 三谷 西島さん、終わった後に一言、彼女に声をかけてたでしょ? それが嬉しかったって言ってましたよ。すごく褒められたって。 西島 褒めたというよりも、「素晴らしかった」って伝えました。瞬間瞬間で“演じ分ける”というハードルの高いことをするシーンで、リハーサルから十分素晴らしかったんですが、本番でも見事に一連のお芝居をされていたので、本当に見入ってしまいました。