日大アメフット監督、コーチの嘘を暴いた関東学連の処分は大岡裁きだが…
その上で森本委員長は、主張が食い違っている以下の4つの矛盾点を挙げ、すべて内田前監督、井上前コーチが虚偽の主張をしていると認定した。 (1)井上前コーチが認めた「QBを潰せ」の指示は反則行為の指示だったのか。 井上前コーチは「そういう気持ちで思い切りプレーしろ」の意味だったと主張しているが、レギュラーの日本代表クラスの選手への指示としては、不自然。井上前コーチが「相手QBと友達か」と聞いたとされる言葉を特に重要視して「友達には、とてもできないようなことをしてこいというニュアンス。両者に受け取り方の乖離など存在しない」とした。 (2)内田前監督からの反則指示はあったのか。 内田前監督と井上前コーチは「指示は一切ない」と供述しているが「内田監督を守ろうと、事実をねじまげている。信頼性が乏しい」と断定。「当該選手の証言に、具体的、迫真性がある。どちらを信用すべきかは明らか」とした。 (3)1プレー目の反則行為が出場条件だったのか。 「試合前々日、前日に当該選手はスクリメージやウォークスルーから外された。スタメンに名前がなく、直々に監督に訴えに行った。試合前に“できませんでしたではすまされない”、と井上前コーチにも言われており、経験則にしたがって、それが条件だったと考えるのが合理的」と認定。 (4)内田前監督は「やらなきゃ意味がない」と言ったのか。 「内田前監督は、“3、5メールの近くに来て当該選手は帰っていった。会話はなかった”と主張しているが、試合に出して欲しい時期に、当該選手が監督からの返事ももらっていないのに、そのまま帰ることは、経験則から言ってあり得ない」とした。また内田前監督は「ボールを見てしまって当該選手(の反則タックル)を見ていなかった。(その後の)プレーもインカム(頭につけるマイクつきヘッドホン)を落としてしまって見ていない」と証言したが、映像での内田前監督の目線を綿密にチェックすると、パスの先のボールを追うことはなく、当該選手の動きを追っていたことが確認された。またインカムを落として拾う動作も一切なく「これらの事実から反則を見ていないという供述は虚偽、である」と断定した。 “大岡裁き”だったと思う。 関東学連が10日に最初の処分を発表して以来、ここまで時間がかかったことに不満はあった。実際、この日、会見出席者は、その点を詫びていたが、フルタイムな理事ではなく、複数のヒアリングと事実認定を慎重に行ってきた過程を考慮すると仕方なかっただろう。 理事会では20人中、4人がこれらの処分と「反則指示の認定」に反対したというが、その声を押し切り、むしろよく白黒をつけたと敬意を表すべき処分発表だった。 関学大の元名QBで、キャスターとして会見で質問もした有馬隼人氏も、「ここまでよくたどりついた。納得のできる処分だった。本来、規律委員会は、第3者委員会の色合いが濃く、捜査機関ではないので、監督、コーチから反則行為の指示があったか、どうかという重要な部分の事実認定を行うことは難しかったと思うが、処分への経過説明を聞いても不明な点はほぼなかった」と、高く評価した。