天才の「逆転の発想」で世界はひっくりかえった…「未開人」の思考法が最高だと言える「驚きの理由」
「人類学」という言葉を聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろう。聞いたことはあるけれど何をやっているのかわからない、という人も多いのではないだろうか。『はじめての人類学』では、この学問が生まれて100年の歴史を一掴みにできる「人類学のツボ」を紹介している。 【画像】なぜ人類は「近親相姦」を固く禁じているのか ※本記事は奥野克巳『はじめての人類学』から抜粋・編集したものです。
「野生の思考」とは何か
レヴィ=ストロースは、『野生の思考』でトーテミズム研究をさらに発展させています。「未開」社会の人たちが、どうやって目の前にある世界の分類体系を構築しているのかに斬り込んだのです。そしてそのような「野生の思考」が、人間にとっていかに重要なものであるのかを明らかにしています。「野生の思考」の具体例を紹介しましょう。 アメリカ先住民のポーニー・インディアンは、小屋を建てて季節儀礼を行います。その小屋の柱には、方角ごとに4種の木が使われます。木はそれぞれ、違った色に塗られます。南西方向には白いポプラ、南東方向には赤いネグンドカエデ、北東方向には黒いニレ、北西方向には黄色いヤナギが置かれます。方位はそれぞれ季節を象徴しており、季節が集まって年となります。こうした分類は、ポーニーの人たちにとっての方位=空間概念と季節=時間概念の仲立ちをします。 この分類体系は分類のためだけにあるのではなく、空間と時間を結びつけ、宇宙の連続性を表現しています。それは、象徴の次元で現実をいったん解体した上で再構成し、全体像をつくり上げる手段となります。レヴィ=ストロースはこうした分類体系の分析をつうじて、文化の核心部分で働いている思考様式、すなわち「野生の思考」を取り出そうとしたのです。 「野生の思考」とは、非合理的で非論理的だと思われてきた「未開人」の遅れた思考法ではありません。「科学的思考」と同じように合理的であり、人類にとっても普遍的な思考法のことなのです。 「野生の思考」は、はるか昔に存在した思考形態ではなく、今日でもなお息づいています。私たちも、日常においてポーニー・インディアンのように、物事を分類しながら世界を理解しようとします。