天才の「逆転の発想」で世界はひっくりかえった…「未開人」の思考法が最高だと言える「驚きの理由」
今の時代にこそ必要な思考法
たとえば春分や秋分の日には、太陽が真東から昇って真西に沈みます。大乗仏教が浸透している日本では真西に沈む太陽の先に「浄土」があるとされてきたので、春分や秋分の日には「此岸」から「彼岸」へと至る仏事が行われています。このような例からも、現代人の中に「野生の思考」が働いていることが分かります。 レヴィ=ストロースは、「野生の思考」は新石器時代に原始科学のもとになり、その後、農耕や牧畜、陶器や織物などの美術工芸を生み出したと言います。 しかし、「野生の思考」は19世紀ヨーロッパでは「未開人」の思考法として、近代の外側に追いやられるようになりました。「野生の思考」は、私たちの住む近代的な世界こそが合理的だとみなすために、野蛮で劣った思考であるとして語られてきたのです。レヴィ=ストロースが「野生の思考」を持ち出したのは、そんな流れに対する強烈なアンチテーゼを示したかったからです。 彼が言う「栽培化された思考」とともに、「野生の思考」は今日に至るまで生き続けてきています。「野生の思考」と「栽培化された思考」の違いは、前者が感覚、直観に基づいて物事を捉えるのに対して、後者はモノを生産する効率を高めるために用いられるという点にあります。つまり「野生の思考」とは、近代科学によって分断されてしまった人間の感覚的な思考を重視し、それを基に世界を捉えようという思考法なのです。 さらに連載記事〈なぜ人類は「近親相姦」を固く禁じているのか…ひとりの天才学者が考えついた「納得の理由」〉では、人類学の「ここだけ押さえておけばいい」という超重要ポイントを紹介しています。
奥野 克巳