【国際女性デー】SHELLYさん「男性も女性も得をしないルールはもう変えよう」世間の常識を塗り替える"NO"の力
3月8日は、女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える「国際女性デー」。インタビュー前編で性教育にまつわる活動について話してくれたSHELLYさん。今回は、その原動力や目指す未来、ご自身が大切にしていることなどについて伺いました。 【写真】SHELLYさん 国際女性デーに向けてメッセージ
【未来は私たち次第。“世間の常識”を塗り替えていきたい】 ──ライフワークとして性教育に取り組まれているSHELLYさんの原動力は、どんな思いや経験から生まれているのでしょうか。 SHELLYさん: 自分のまわりにいる女性たちですね。最初は二人の姉と話していて感じた「そうだよね、おかしいよね!」という怒りから始まったけれど、子どもが生まれた今は、自分が子どもの頃から感じてきた社会のストレスを、子どもたちの世代に残したくなくて。 理想は、私が母親から「会社員時代にお茶を汲まされていた」という話を聞いたときの「うぇっ、何それ…」っていう感情を、子どもたちが当たり前に抱いてくれること。その変化の一部になりたい。子どもたちが大人になったとき、「あの頃の社会をそのまま渡したくなかったから、私はすごく頑張ったよ」って自信を持って言えるようになるための戦いだと思っています。 ──この社会のままでは渡せない、という思いはとてもよくわかります。 SHELLYさん: 未来は私たち次第だから、代々受け継がれている刷り込みや“世間の常識”みたいなものを、次の世代のためにちょっとずつ塗り替えていきたい。とはいえ、それを自分より上の世代と分かち合うのはめちゃくちゃ大変なんですけどね(笑)。 【考えが違う人と向き合うときこそ、共感力が大切】 ──性教育をはじめとする社会的課題に対して少しずつ理解が進む一方で、勇気を持って発信した人がバッシングを受けるという残念な現状もあります。そういう声に対して、SHELLYさんはどう受け止め、距離をとっていらっしゃいますか。 SHELLYさん: 家とか車の中とか、一人のときはブチギレてます(笑)。だけど、相手に向き合うときは共感力を大事にしたいので、自分の大切な人に置き換えたり、「この人も、誰かのすごく大事な人」って想像したりします。例えば、「女性は子どもを産むことが幸せだろ」という発言があったとして、世代的にはもしかしたら自分の親も無意識に口にしているかもしれない。だって、それが当たり前とされる社会で育ってきているから。 そういう発言への怒りや拒否反応はあって当然だし、その感情を発散できる場も必要だと思います。でも、その人に対して否定や拒絶で終わらせてしまったら、考え方が重なる人や同じ世代の人は「自分が否定された」って気持ちになるだろうし、その人を大事に思っている家族も傷つきますよね。 性教育を発信している立場としてあえて使わせてもらうと、そこで否定する側は気持ちいいかもしれないけれど、公開マスターベーションをしているだけで、何の解決にもならないんですよ。 ──対立が深まるだけで、対話にすらなっていないですよね。 SHELLYさん: そう。だから私は、「あなたの世代の方がそう思われるのはわかります。ただ、今はこんなふうに社会が変化してきていて、私はこう思っています」と伝えたいし、できるだけ論理的に伝えられるように、わかりやすいたとえ話や事例のストックを増やすように心がけています。 世代の話でいうと、男性社会の中で戦ってきた女性の先輩たちの中で”名誉おっさん”(名誉男性:男尊女卑的な価値観に染まってしまった女性)になりやすい人がいたのは仕方がないと思うんですよ。男性社会の中でキャリアを築いたり生き抜いたりするには、“男のルール”で戦うしかなかったわけだから。 【大事にしているのは、誰も置いていかないこと】 ──声をあげたときのプレッシャーも、今以上に厳しかったでしょうね。 SHELLYさん: なかったことにされてきた声もたくさんあると思います。大切なのは「男性も含めて誰も得をしないルールはもう変えようよ」という話であって、ここまで戦ってきた人たちを全否定するのは違うと思うんですよね。その人たちが戦ってくれなかったら、私たちは変化のスタートラインにも立てていないはずだから、そこへの敬意は絶対に必要。 私がメディアに出る上でいちばん大事にしているのは、「誰かの代表になること」じゃなくて、「誰も置いていかないこと」なんです。私の言葉で誰かを傷つけたり、「私のことは見えていないんだ」って感じさせたりすることがいちばん不安。それは、私自身が日本で外国人として育ってきて、学校でも少数派にいることが多かったことも影響しているかもしれないけれど、誰かをそういう気持ちにさせたくないっていう思いが強いです。 ──誰も置いていかない、線引きをしないというのは根源的で大切な視点ですし、本来はそれが社会の前提であるべきだと思いますが、バランスを間違えると言えなくなってしまうことが増える可能性もはらんでいます。SHELLYさんのお話を聞きながら、それほど強い覚悟で発信やチャレンジをされているのだなと改めて感じました。 SHELLYさん: 本当に難しいことなので、ちゃんとできているかどうかわからないけど、チャレンジはしています。私のYouTubeチャンネルのチームは、みんなが「どう伝わっていくか」への想像力があるし、すごくバランスがいいんですよ。私一人だったらきっと早々にズッコケてるし(笑)、それ以前に動けていないと思うので、本当にありがたいです。