“循環する美食”で質とサステナブルを両立【進化する幸せ産業】
■ダイニング33 住所:東京都港区麻布台1丁目3-1 麻布台ヒルズ 森JPタワー33階 時間:ランチ 11:00~15:00(L.O.14:00)ディナー 18:00~23:00(L.O.22:00) 不定休
「茅乃舎」の出汁かすも再活用
希少なイタリアン野菜を栽培
廃棄物を生かす発想もある。農家兼飲食業を営む「里山サポリ」の城戸勇也の試みが、その例だ。福岡県久山町を拠点に循環農業に取り組む城戸は、希少なイタリアン野菜を栽培し、全国のレストランに直接届けている。「朝食イタリアン キッキリッキー」では、自らキッチンにも立ち、スープや色とりどりのサラダなど、コース仕立ての朝ご飯を提供している。
畑の肥料となるのは卵、飲食店の生ごみ、そして出汁かすだ。これらは、地元企業である久原本家が茅乃舎だしを製造するときに出る廃棄物。久原本家もまた同じく、次世代に未来をつなげるサステナブルな食をテーマとし、農法法人美田を2004年に設立するなど、土づくり、野菜づくりと向き合ってきた。醤油蔵が起源である久原本家が、醸造発酵という食の分野で、自然の循環から切り離せないものづくりを続けてきた。今後も地元農家と連携して、農業支援を行うという。
城戸は、週末にはキッチンカーでの野菜やピザの販売などにも精力的だ。生産者が直接調理、サーブし、消費者と交流することにより、その思いはよりダイレクトに伝わる。もともとイタリアンシェフだった城戸だからこそ、どう調理すれば野菜本来の力を引き出せるかを伝授もできる。消費者が野菜を手にすれば、未来について考えるきっかけになる。これも食の循環だ。
■里山サポリ 住所:福岡県糟屋郡久山町猪野91 時間:毎週日曜日13:00~日没に直売
これらの全ての店に共通するのは、メッセージをただ伝えるだけではなく、消費者を自分ごととして巻き込み、行動につなげ、仲間にする点だ。共感者は次なる語り手になる。2024年につながる食の循環がどう進化してくのか、楽しみだ。