楽しさ予想以上で乗り換え? 新型CBR650R E-クラッチ車に初期型オーナー試乗
システムのオン/オフはメーターかクラッチレバーで確認
シートにまたがってみると、外観は変更されていますが、車体などは同じなので、ポジション的にも愛車と同じ感じです。ハンドルはセパレート式ですが、前傾姿勢はさほどきつくなく、ロングツーリングでも比較的疲れにくいなどの特徴があります。 また、シート高810mmも愛車と同じですから、足着き性も同等。身長165cm、体重59kgの筆者の場合、両足だとつま先立ちになりますが、片足ならカカトまでベッタリと地面に着きます。 イグニッションをオンにすると、新型メーターが起動。ギアがニュートラルになった状態だと、メーター右端中央にあるインジケーターが点灯し、ホンダE-クラッチのシステムがオンになっていることを知らせます(システムがオフの時は消灯)。 サイドスタンドを跳ね上げ、ブレーキをかけながら、右ハンドルにあるスタータースイッチを押せばエンジンが始動。ホンダE-クラッチ搭載車では、この状態から発進する際、クラッチには一切触れず、シフトペダルのみ踏み込めば1速に入ります。一般的なMT車では、ギアを1速に入れる際、クラッチレバーを握らないと、エンスト、もしくはバイクが前進してしまいますよね。そのため、最初はちょっと勇気が必要。でも、慣れれば、問題なく操作できちゃいます。 逆に、ホンダE-クラッチ搭載車の場合、いつものクセで、ついクラッチレバーを握ってしまうと、システムが解除されてしまい、普通のMT車になってしまいす。ちなみに、ホンダE-クラッチ搭載車では、システムがオンの時にクラッチレバーの遊びが大きくなっており、オフの時は通常の遊びになります。レバーを握った感覚でも、機能が働いているかどうかが分かるということですね。
発進は手動の半クラッチよりスムーズ
ギアを1速に入れたら、そのままアクセルを徐々に開けるだけで発進。驚いたのは、この時のスムーズな加速です。バイク歴40年以上の筆者は、特に、発進時の半クラッチなどに苦手意識はありません。ところが、クラッチを手動で操作するよりも、クラッチの自動制御を使った方が、車速が明らかによく伸びるのです。 ホンダE-クラッチでは、エンジン右側のクランクケースサイドカバー部にユニットがありますが、内部にある小型の電動モーター2基が、クラッチレバーの入力操作を人の握力にかわって行う仕組み。制御は、スロットル開度、ギアポジション信号、シフトペダル荷重、クラッチ切断信号、メーターインジケーター信号、前後輪の回転速度など、さまざまな信号を使うMCU(モーターコントロールユニット)が担当しています。 つまり、筆者の場合、手動の半クラッチ操作よりも、電子制御で駆動するモーターの方が、よりスムーズな発進操作をできるということになります。 ちなみに、筆者は、実際に乗ってみるまで、このシステムを、主に半クラッチなどが苦手な初心者向けだと思っていました。ところが、スキルのレベルはさておき、一応、操作に不安のないはずの筆者でも、「負けた」と思ったほどスムーズでした。 特に、登り坂で停車し、再発進する際は、違いが顕著。通常は、リアブレーキを徐々にリリースしながら、半クラッチも上手く使わないと車体が後退する場合もありますよね。そうしたシーンでも、ホンダE-クラッチは、不安なく発進できます。 また、Uターンなどの際も、半クラッチを使わないでいいため、不意のエンストなどで立ちゴケしてしまう不安もなし。リアブレーキで車速を調整しながら、スムーズに走れます。 ただし、例えば、細い路地で、5km/h以下の極低速でUターンするときなどに、ホンダE-クラッチを使うと、車体がややギクシャクし、バランスを崩しそうな場合もありました。こうしたシーンでは、アクセルをほんの少しだけ開けるのですが、ちょっと開けすぎると、パワーがドンッと出てしまうためです。 こうした場合には、手動で半クラッチ操作をした方が、よりスムーズな感じ。もし、そうした操作が苦手な初心者などは、ホンダE-クラッチ搭載車でも、思い切ってバイクを降りて、車体を押し歩きしターンした方がいいでしょう。 加えて、ホンダE-クラッチは、登り坂などで車体を押し歩く際も便利でした。通常は、エンジンをかけたまま、ギアを1速にいれ、半クラッチとアクセル操作で押したりしますよね。一方、ホンダE-クラッチ搭載車は、クラッチ操作が不要なので、アクセル操作だけで、車体を押して坂を登れるのです。 なお、ホンダE-クラッチ搭載車は2速以上の高いギアに入っていても、発進は可能です。ただし、あまり高いギアを使い続けると、クラッチが早期に摩耗する可能性もあるのだとか。また、クラッチの摩耗が進むと、システムが停止する場合もあるので、ホンダでは、基本的に、発進は1速ギアを使うことを推奨しているそうです。