白亜紀末大絶滅後、すぐに繁栄?ゲノム新検証が導いた硬骨魚の進化プロセス
恐竜時代の起源
この「アカンソモルファ類」の硬骨魚が、進化史上、いつ出現したのかご存じだろうか? 化石記録においてアカンソモルファ類は、約1億年前の白亜紀中期頃のものが知られている(Patterson 1993)。これは恐竜時代(中生代)の後半にあたる。 ―Patterson, C. (1993) An overview of the early fossil record of the acanthomorphs. Bulletin of Marine Science. 52: 29-59. 硬骨魚が初めて出現したのは中生代前半(約4億2000万年前シルル紀)と考えられている(Botella等2007)(注1)。したがって、その後の3億年以上の間、硬骨魚類の顔ぶれは、我々にとって非常になじみの薄い、少し風変わりないでたちをした「絶滅グループ」の種によって大半が占められていたことになる。(注:同じく硬骨魚類の一系統であるシーラカンス目は、中生代中頃から現在まで脈々と直系の子孫を残している非常に稀なグループといえる。) ―Botella, Hector, Henning Blom, Markus Dorka, Per Erik Ahlberg, and Philippe Janvier 2007. Jaws and teeth of the earliest bony fishes. Nature 448, pages583-586. 注1:初期の硬骨魚については「あなたのDNAに潜む太古の魚“インナーフィッシュ”の影」の記事において取り上げた。 こうした硬骨魚の化石記録をみてみると、スズキやカレイ、フグ等を含むアカンソモルファ類は、その出現時から白亜紀後期を通し、実はかなりマイナーなグループだったことが分かる(種の数はかなり少なかった)。 白亜紀中後期、世界各地の海洋は、例えば小型のエンコダスEnchodusの大群や体長5メートル近くに達したシファクティヌスXiphactinus(注:英語ではザイファクティヌスと発音)、そしてカジキのように鼻の先端に非常に長い突起物をもったプロトスフィラエナProtosphyraenaといった、少し奇妙な姿をしたグループの魚によって占められていた。こうしたグループの多くが、実は白亜紀末までに絶滅している。(アカンソモルファ類を含む現生種によって構成されるグループと、進化上のつながりを直接もたない。) そして白亜紀の海洋には同時に、こうした魚を追い回すように、非常にたくさんの獰猛なサメと海生爬虫類もいた。特にモササウルスと首長竜はその大きさから、白亜紀後期の生態系のトップ捕食者として君臨していたとみて間違いないだろう。(注:こうした中生代の海生爬虫類は恐竜とは「別のグループ」に分類される。) かなり生存競争のきつい過酷な世界だったのかもしれない。現在の海洋環境に広がる生態系とはかなり異なる様相を呈していたはずだ。