白亜紀末大絶滅後、すぐに繁栄?ゲノム新検証が導いた硬骨魚の進化プロセス
硬骨魚類の多様性
どうして硬骨魚は、今日、これほどまでの多様性を手にいれることができたのだろうか? その理由は様々考えられるが、体にみられる解剖学的な特徴は見逃せない。ご存じのようにこの一大グループの魚たちの全身には、非常にたくさんの細かな骨が規則正しく並んでいる。一つ一つの骨にはそれなりに意味がある。何千万年という時を自然選択のふるいにかけられ続け、研ぎ澄まされた産物なのだ。 小魚の煮物を食べる時、箸で丁寧に小骨をかき分ける必要があることは誰もが経験しているはずだ。是非、次に食べる機会があれば具体的にどの体の部位に、どのような骨があるのか、注意して観察してみていただきたい。 アゴや頭骨は当然硬い丈夫な骨からなる。その周りにあるエラの部分にも虹のように何重にも重なった丈夫な骨が見つかるはずだ。そして頭からしっぽまで一直線に伸びた背骨のまわりには、肋骨やその他の細い線状の骨が無数に規則正しく並んでいる。内臓を守るのと同時に高度のスイミング技術を可能にする発達した筋肉を支える大事な役目も併せ持つ。 そして硬骨魚の大半が「骨でできたヒレ」を持っている。背びれ・胸ひれ・尾ひれなどは丈夫な長い骨で構成されている。ちなみに「条鰭綱(じょうきこう):Actinopterygii」という硬骨魚の一大グループ ── 英語でいうところの「Ray-finned fish」 ── は、骨化したヒレをもつという脊椎動物の進化上、革新的な出来事を物語っているといえるだろう。 多数ある硬骨魚の仲間の中でも「アカンソモルファ類(Acanthomorpha)」は、現在264科そして18,100種近くが知られており、最も繁栄している一大グループといえる。このグループにはサケスズキ目(=スズキ・マグロ・カジキ・サバ・フグ等)、クジラウオ目(=キンメダイ等)、タラ目、アンコウ目・アカマンボウ目等が分類上含まれる(こちらのサイトに説明あり)。(注:コイ、ドジョウ、ウナギ、ニシン、イワシ、チョウザメ等の硬骨魚は別のグループに属す。) ―「What are the acanthomorpha?」 無数の大小さまざまな骨で構成されたアカンソモルファ類の全身骨格。この特別のボディーは、スイミング能力の向上・革新とともに、外敵から身を守ることにも役立ったはずだ。進化上の大型化をもたらすことにも貢献したことだろう。あるものは砂の中に潜り込む術(すべ)を手に入れ、限られた時間だが空中を飛行する能力を身につけた種さえ登場した。 まさに一石何鳥にも及ぶ進化上の代物(しろもの)だ。