史上最年少大統領は「前進」できるか マクロン氏に立ちはだかる課題
7日に行われたフランス大統領選挙の決選投票は、65パーセント以上の得票率でマクロン前経済相が勝利した。これから1週間の間に大統領職の引き継ぎ作業が行われ、14日にはフランス大統領としての職務を正式にスタートする予定だ。来月10日と17日には国民議会選挙が実施され、マクロン氏の率いる政治運動「前進」から多くの議員が当選するとの予測もすでに出ているが、フランス史上最年少となる39歳で大統領に就任するマクロン氏にはEUや移民、雇用といった様々な問題で分裂傾向にあるフランス社会の早急な立て直しが求められている。 【写真】仏大統領選の有力候補に浮上した39歳 マクロン前経済相とは何者か?
棄権・無記名投票が続出した決選投票
マクロン候補の圧勝で終わった決選投票だが、現在のフランス社会が抱える問題点が数字から垣間見ることもできる。アメリカ同様、フランスも投票を行いたい有権者は事前に選挙人名簿に登録する必要があるのだが、今回の決選投票では登録を済ませた有権者の約25パーセントが投票を棄権しており、1969年以降では最も高い数字となった。また、無記名投票も10パーセントを超える見通しとなっており、こちらも前例のない多さとなっている。マクロン氏もルペン氏も、共和党や社会党といったフランスにおけるメインストリーム政党に所属していなかったため、長年にわたって巨大政党を支持してきた有権者からの支持を得られなかったという見方もある。 加えて、左派の有権者にとって、マクロン氏もルペン氏も受け皿にはならなかったという指摘も存在する。マクロン氏は社会党出身で、オランド政権では経済相を務めた経験もあるが、大統領選挙で掲げた政策は新自由主義色の強いもので、左派からの支持はそれほど高くなかった。左派や急進左派の候補を支持してきた有権者にとって、ルペン氏の対抗馬となったのが中道の新自由主義者であるマクロン氏であったため、どうしても政策に同意できないという思いを抱いた有権者は少なくなかった。 当選の確定が報じられてから間もなくして、マクロン氏は選挙陣営本部で演説を行い、「多くの有権者が示した怒りや不安、疑念といったものに真摯に向き合うことが私の責任である」と語り、分断されたフランス社会の統合を約束した。その後、ルーブル美術館前でも多くの支持者を前に演説を行った。この演説では、マクロン氏が登場する際にベートーベンの「歓喜の歌」が流された。日本でもよく知られた「歓喜の歌」は、ヨーロッパの統一を象徴するものとして、EUのテーマ曲としても正式に使用されている。EUとの関係強化を政策として掲げてきた、マクロン氏らしい演出であった。