史上最年少大統領は「前進」できるか マクロン氏に立ちはだかる課題
ルペン氏の父は2002年の大統領選で、決選投票に進み、当時現職のシラク大統領に大差を付けられて敗北している。ジャン=マリー氏は約550万票を獲得(シラク氏は約2550万票)。得票率は17.8パーセントであった。国民戦線の得票率は2007年に10.4パーセント、候補がマリーヌ氏に変わった2012年に17.9パーセントを記録したが、決選投票には進めなかった。しかし、1000万人以上の有権者がルペン氏に投票し、彼女の得票率が約35パーセントと、過去の大統領選と比べて倍近くの票を得ている。オランダとフランスで右派ポピュリズムは大きな結果を残せなかったが、これまで以上に支持者が増えている実態も明らかになった。 「正直、9月までまだ時間があるため、フランスやオランダの選挙結果がドイツにどう影響するのかは判断が難しいですが、『ドイツのための選択肢』はこのところ内部闘争で混乱しているため、ドイツの右派ポピュリストにとっては大きな向かい風となりそうです。来週の州議会選挙の結果にまずは注目したいと思います」 マクロン氏の当確がフランス国内外のメディアによって一斉に伝え始められたころ、EU加盟国の政治事情を分析するドルトムント工科大学ジャーナリズム研究所のユリア・ローネンドンカーさんは、9月に行われるドイツ総選挙への影響についてそう語った。14日はドルトムントやケルンといった町があり、ドイツで最大の人口を抱えるノルトライン・ヴェストファーレン州で州議会選挙が行われるが、秋に行われる総選挙の行方を占うものとして注目されている。 この数年で急速に勢いを伸ばした右派政党「ドイツのための選択肢」は党の規模が大きくなるにつれて内部抗争が表面化。穏健路線に転じて他政党との連立を模索していたフラウケ・ペトリー党首は党内で支持を得られず、党首の座からは離れないまま秋の総選挙には立候補しないという考えを発表している。 完全な“消火”とまではいかなかったものの、オランダやフランスでは右派ポピュリズムの台頭は一時的とはいえ鎮火された。EUで最も大きな影響力を持つドイツの有権者は、これらの結果を受けてどのような答えを出すのだろうか。
--------------------------------- ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト