史上最年少大統領は「前進」できるか マクロン氏に立ちはだかる課題
6月の国民議会選でマクロン派が過半数取れるか
日本でも大きく報じられた、EUとの関係強化や、ユーロ圏の統合をさらに進めていきたいというマクロン氏の政策。国内政策に目を向けると、フランスの財政赤字解消を解消させる目的で、最大で10万人を超える公務員の人員カットにも言及している。また、保護を求めてフランスにやってくる難民の受け入れも含めて、移民受け入れに関して寛容な姿勢を見せている。フランスへの投資拡大や雇用促進、年金制度改革など、マクロン氏が有権者に掲げた政策は多いが、政策をスムーズな形で実行に移すためには、国民議会(定数577)を掌握する必要がある。 マクロン氏は15日にも首相を指名する予定だが、現時点で誰が首相に指名されるのかは不明だ。誰が首相になるかによって、マクロン政権が掲げる政策のプライオリティがより明確になる。マクロン氏は以前から「長いスパンでやっていける人物を指名したい」と公言してきたが、6月の国民議会選挙でマクロン氏の政治運動「前進(En Marche!=アン・マルシュ)」が過半数を制することができなかった場合、首相が短期間で辞任に追い込まれる可能性もある。 フランス国民議会選は来月11日と18日に行われる。候補者は今月15日から19日までの間に出馬を表明する必要があるが、「前進」は全ての選挙区で候補者を擁立する可能性が高いとフランスでは報じられている。フランスのリサーチ会社「オピニオンウェイ」が実施した最新の調査では、国民議会選で「前進」が249~286議席を獲得して第一党になるとの結果が出ている。マクロン派が議会で過半数を超えることを懸念するフランス人有権者も少なくないが、連立も視野に入れた場合、マクロン氏が議会を掌握するというシナリオも現実的な話だ。
負けたが支持は広げつつある右派ポピュリズム
アメリカでトランプ大統領が誕生したことによって、ヨーロッパでの右派ポピュリズム台頭が懸念されてきたが、フランス大統領選ではマクロン氏が当選し、3月に行われたオランダ下院選では中道右派の与党「自由民主党」が第一党を維持し(8議席減らしたが)、ポピュリストとして知られるウィルダース党首率いる極右の自由党が第一党になることはなかった。しかし、これらの結果だけで右派ポピュリズムがヨーロッパで勢いを失っていると考えるのは早計だ。オランダの下院選で自由党が前回の選挙から5議席増やし、獲得議席数は自由民主党に次いで二番目に多い。 ルペン候補が所属する「国民戦線」は、彼女の父親であるジャン=マリー・ルペン氏によって創設された右派政党だが、フランス国内外で極右と評された党の方針は、2011年に新党首に就任した娘のマリーヌによって少しずつ穏健路線にシフトチェンジしていった。移民の受け入れ数制限や反EU、保護主義政策などがクローズアップされたものの、現在の国民戦線はジャン=マリー氏の時代のものとは異なる。極右政党というイメージを払拭したいマリーヌ氏による戦略が功を奏してか、国民戦線の支持者は父親が党首であった時代よりも確実に増加している。決選投票でマクロン氏に敗れたルペン氏だが、1000万人以上がルペン氏に投票した(得票率は約35パーセント)。