クルマ好きにとって「大きな瞬間」 ジャガーFタイプ クーペボディとのお別れ 長期テスト(最終)
クルマ好きにとっても大きな瞬間
まあ、Fタイプは完璧な内燃エンジンモデルというわけではなかった。筆者好みのシートポジションへ設定すると、フロントガラス両脇の太いピラーが視界を遮った。交差点では、身を乗り出さないわけにはいかなかった。 パッケージングも理想的ではなく、2シーターのクーペとしては、車重が1780kgと重かった。とはいえ、同等のバッテリーEVなら、500kg前後は更に重くなるはずだが。 2025年以降に向けて、ジャガーは展開を明らかにしている。広告などには、期待をもたせるような表現も見られるが、ほぼ確実にスポーツカーはラインナップへ加わらないだろう。短期的に、ではなく。 ジャガーにとって、大きな瞬間が来ようとしている。クルマ好きにとっても。 それでも、別れを嘆いているだけではAUTOCARらしくない。英国の中古車市場を検索すれば、V8エンジンを載せた走行距離の浅いFタイプが、40台前後売られている。価格は、安いものなら8万ポンド(約1536万円)から。今なら値引きも効くようだ。 Fタイプのようなクルマは、頻繁に乗られる種類ではない。まだ数年間は、良好な状態の例を探せるはず。象徴的なモデルが再び登場することを期待しつつ、大切に乗りながら、その日を待つしかないだろう。
セカンドオピニオン
こんなクルマが、ショールームから消えてしまうことが信じがたい。動的特性へ細心の注意が払われ開発された、Fタイプ Rは素晴らしかった。道や速度を問わず、楽しむことができた。 時代を代表する1台といっていい。中古車の人気も、これから上昇していくに違いない。 マーク・ティショー(Mark Tisshaw)
テストデータ
■気に入っているトコロ 刺激的なレイアウト:ロングノーズの2シータークーペこそ、スポーツ・グランドツアラーを体現したもの。将来のジャガーには、存在しないであろう種類だ。 目の覚めるパワートレイン:大排気量で滑らかなV8エンジンが、圧巻の速さと一体感を提供する。8速ATも素晴らしい。 類まれなスタイリング:ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを持ち、非常に美しい。 長距離での快適性:ロードノイズを除いて、欧州横断に求められるすべてを備えている。 ■気に入らないトコロ ロードノイズ:大径のタイヤとボックスセクション・ボディの影響で、走行音はうるさかった。他メーカーの設計なら、こうはならないだろう。 ■走行距離 テスト開始時積算距離:704km テスト終了時積算距離:1万1168km ■価格 モデル名:ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様) 開始時の価格:10万3075ポンド(約1979万円) 現行の価格:10万7155ポンド(約2057万円/(R75 プラス) テスト車の価格:11万1000ポンド(約2131万円) ■オプション装備 20インチ 5スプリットスポーク・アルミホイール :2000ポンド(約38万4000円) カルパチアン・グレー塗装:1335ポンド(約25万6000円) パノラミック・ガラスルーフ:1335ポンド(約25万6000円) エクステンデッド・レザーシート:1055ポンド(約20万3000円) クライメート・パッケージ:685ポンド(約13万2000円) 盗難防止トラッカー:545ポンド(約10万5000円) ブラインドスポット:アシスト:500ポンド(約9万6000円) ドライバーアシスト・パッケージ:470ポンド(約9万円) ■燃費&航続距離 カタログ燃費:9.6km/L タンク容量:70.0L 平均燃費:9.4km/L 最高燃費:11.4km/L 最低燃費:5.8km/L 航続可能距離:659km ■主要諸元 全長:4470mm 全幅:1923mm 全高:1311mm 最高速度:299km/h 0-100km/h加速:3.5秒 乾燥重量:1743kg パワートレイン:V型8気筒5000cc スーパーチャージャー 使用燃料:ガソリン 最高出力:575ps/6500rpm 最大トルク:71.2kg-m/3500-5000rpm ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動) トランク容量:509L ホイールサイズ:20インチ タイヤ:255/35 ZR20(フロント)/295/30 ZR20(リア) 車両重量:1780kg ■メンテナンス&ランニングコスト リース価格:1390ポンド(約26万9000円/月) CO2 排出量:239g/km メンテナンスコスト:なし その他コスト:なし 燃料コスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン) 燃料含めたランニングコスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン) 1マイル当りコスト:0.26ポンド(約50円) 不具合:なし
スティーブ・クロプリー(執筆) 中嶋健治(翻訳)