「アナ雪」に「おしゃべりな雪だるま」を登場させる巧妙さ…子ども向けのディズニーが「世界一」を獲れた真の理由
■買収する企業の文化・社風はそのままに 話をボブ・アイガーの交渉哲学に戻しますが、とことん誠実に交渉相手と向き合うのがボブ・アイガーのやり方でした。こうした哲学に裏付けられた誠実な交渉姿勢が次々に功を奏し、ボブ・アイガーは現在の巨大なコンテンツ帝国とも言うべきウォルト・ディズニー・カンパニーを作り上げたのです。 こうしてディズニーは、ピクサー、マーベル・コミック(40億ドル)、ルーカス・フィルム(40億5000万ドル)、21世紀フォックス(713億ドル)と次々にコンテンツ制作企業を手中に収めたことにより、複数のブランドを常に抱えている状態になりました。 これは、経営にきわめて高い安定性を確保できるというメリットの他にも、非常に大きなメリットがあります。買収する企業の文化・社風などをすべて残したため、ピクサーにしても、マーベル・コミックにしても、それぞれの独自性を保ちながら、ブランドを発展させていくことができるわけです。 要するに、ディズニー傘下ではあるものの、すべての企業をディズニー色に染め上げてしまうわけではないので、幅広い視聴者層に対して訴求するコンテンツを作ることができるようになるのです。逆に買収先の優秀な人材をディズニー本社に呼び、その独自性を取り入れることすらあります。 ■完璧なビジネススキーム ウォルト・ディズニー・カンパニーは、完璧とも言えるビジネススキームを有しており、それによって継続的に全世界で利益を上げています。彼らのビジネススキームは、「各事業部門のシナジー効果」を軸に考えられています。 例えば、日本における『アナと雪の女王』の例を見てみましょう。「アナ雪」は、まずモーション・ピクチャー部門が制作した映画が大ヒットしました(日本だけで興行収入250億円)。そして、そのDVD、CDなどの関連商品がそれぞれ200万枚以上のヒットとなり、ライセンス商品も売れて1000億円以上の上代売上を稼ぎ出しました。 それ以外にも、ゲーム(ツムツムなど)やコンテンツの二次使用、テレビ地上波放映(興行収入の約10%で、放送局に1回分の放映権を売却)、最後にパーク部門が東京ディズニーシーに「アナ雪」のアトラクションをオープンするという流れで収益を上げていきます。つまり、ディズニーのビジネススキームは、コンテンツを上流としてカスケードダウン(川上から川下へ)していく形になっているのです。 優良なコンテンツさえ作ることができれば、それによって部門間のシナジー効果が自然と生まれ、収益が上がっていきます。