「アナ雪」に「おしゃべりな雪だるま」を登場させる巧妙さ…子ども向けのディズニーが「世界一」を獲れた真の理由
■ディズニーにとって重要な「買収劇」 例えば、最近のディズニーアニメーションはピクサー・アニメーションとともにほぼ毎年アカデミー賞を受賞しています。特に、これまで合計12作品もの長編アニメーション映画がアカデミー賞を受賞しているピクサーがディズニー傘下に入ったことは非常に大きかったと思います。 このピクサー買収において立役者となったのが、ボブ・アイガーでした。もともとピクサーはルーカス・フィルムのコンピュータアニメーション部門として設立され、その後、アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが買収し、大株主となっていました。つまり、ピクサーの事実上の創業者はスティーブ・ジョブズでした。 1995年、ピクサーがわずか3000万ドルで制作した『トイ・ストーリー』が全世界で3億9400万ドル以上の興行収入を上げる大ヒットとなると、ピクサーは一躍、コンテンツ制作企業として世界的に知られるようになります。 当時から、ピクサーとウォルト・ディズニー・カンパニーは良好な協力関係を築いていましたが、2006年の前年に、ディズニーの最高経営責任者に就任していたボブ・アイガーの交渉が実り、ピクサーはディズニーに74億ドルで買収されます。 これが、現在のディズニー社にとってきわめて重要な買収劇となったのでした。 ■日本企業のM&Aが絶望的に下手な理由 ボブ・アイガーの交渉哲学は、たいへん興味深いものです。彼は、ほとんどのケースにおいて、企業価値とそれほど変わらない買収価格を提示します。つまり、企業価値よりも大幅に価格を下げて安く買いたたこうとするような交渉はせず、数字のごまかしなどもしないということです。そんなことをすれば、交渉相手が「敵」に変わってしまうリスクがあるからです。 また、ボブ・アイガーは企業を買収する際に、買収される側の企業に対してその会社の文化をそのまま残すということを約束していました。文化や社風をそのまま残すだけでなく、ディズニー本社から取締役を派遣するようなことすらしないというのです。 一方、日本企業は企業の買収が絶望的に下手です。銀行や保険会社の合併では、無駄を省くことがまったくできず、社名ですらもどんどん長くなっていきます。みずほ銀行が合併によるシステムの複雑化から大きなシステム障害を起こしたのは記憶に新しいでしょう。 また、外資企業を買収する場合でも、企業に自社の社員を放り込み、自社の文化や社風を押し付けてしまうのです。そもそも買収先の企業を見る目が日本企業にはありません。そのため、多くの日本企業が外資企業のM&Aに失敗しています(図表1参照)。