「頭のいい人」の定義は、以前とは大きく変わった…現代社会で、「頭のよさ」を決定づける存在と能力とは?
事業計画をつくるなら「ハードSF」を読め
──安達さんの人生観やキャリアに影響を与えた本は何でしたか。 ドラッカーの著作が人生に与えた影響は大きいですね。特に『マネジメント[エッセンシャル版]』は何度読み返したかわからないほど。 ドラッカーの本は、その立場に立つと中身がよくわかる本です。学生時代には何をいっているのかわからなかったのですが、社会人1、2年目で読み直すと深く理解できて、「自分のために書いてくれたんじゃないかな」と錯覚するほどでした。ドラッカーの主要著作をほぼすべて翻訳された上田惇生さんの日本語訳がわかりやすいので、そのおかげでもあると思います。 あとは、SF小説が大好きです。事業計画をつくるなら絶対読んだほうがいいと思っています。特にハードSFは、事業計画よりもずっと先のことまで、「こういう技術が実現したら世の中で何が起きるのか」というのを描き出しています。これほど未来を精緻に予測したものはあまりないので、勉強になります。 なかでも、アーサー・C・クラークの長編小説『幼年期の終り』は印象に残った一冊です。テーマは、宇宙の秩序のために百数十年間も「飼育」される人類と、変貌していく地球の姿なのですが、想像もつかない方向へ展開していきます。 また、安部公房の『第四間氷期』も、人類の進化が驚異的な解像度で描かれていて面白い。その後は安部公房にハマって全作品を読みました。ハードSFの小説は「価値観の変容」について精緻に表現されていて、それが一番面白いんですよ。 ──最後に、これから挑戦したいことについて教えてください。 いまちょうど進行中なのが、生成AI専門の会社の事業です。2023年7月、中高時代の知人のファンドに出資してもらってワークワンダースという会社を立ち上げました。昨年から約90社にインタビューしたところ、いま一番ニーズがあるのがチャットボットでした。ChatGPTなどの生成AIが、チャット形式で質問に回答してくれる仕組みですね。これは、その企業の営業提案書や議事録などを読み込ませておくことによって実現でき、営業のロールプレイやECサイトの問い合わせ、M&Aの意思決定プロセスの事前処理など、実に多様なシーンでの活用が想定されています。 また、元電通のコピーライター梅田悟司さんと一緒に、文章生成ツールを開発しています。あるプロダクトについてペルソナを生成し、いくつかのキーワードを入れると、それをもとにキャッチコピーやネーミング、ランディングページ、広告の文言まで、高いレベルで一気通貫してつくれるツールです。 こうした生成AIを活用したサービスとともに、コンサルティングや研修を提供し、企業の経営課題解決に寄与していきたいと考えています。 <安達裕哉(あだち ゆうや)> ティネクト株式会社 代表取締役 1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、理系研究職の道を諦め、給料が少し高いという理由でデロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。また、個人ブログとして始めた「Books&Apps」が “本質的でためになる” と話題になり、今では累計1億2000万PVを誇る知る人ぞ知るビジネスメディアに。 <flier編集部> 本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。 通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。 このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。