「頭のいい人」の定義は、以前とは大きく変わった…現代社会で、「頭のよさ」を決定づける存在と能力とは?
相手の語る課題を、うのみにしてはいけない
──本書では、「客観視」「整理」「傾聴」「質問」「言語化」という5つの思考法が解説されています。仕事で成果を出し続けたいと願う20、30代のビジネスパーソンにとって特に大事な観点を1つ選ぶとしたらどれでしょうか。 一番大事なのは「傾聴」だと考えています。質問と言語化は難しいのですが、傾聴ができてはじめて行えるもの。そして客観視と整理は傾聴のためにあるといっていいでしょう。 「頭のよさは他者が決める」ということは、他者から「この人は自分の役に立つことをしてくれる、貢献してくれる」と思われることが第一条件になります。となると、相手に役立つことが何なのかを理解しないといけないので、傾聴が大事になる。マーケティングも同様に、クライアント企業のいうことを聞かないといけない。だからマーケティングは「会社版の傾聴」みたいなものなんです。 ──傾聴力を上げるための秘訣は何でしょうか。 話を聞くときに、「次に尋ねる質問を考えない」ことですね。まずは、相手の話に集中してメモをとって理解していく。そして、相手が話し終えてから「この状況でさらに理解しないといけないことは何か」と、次の質問を考えます。会話中に沈黙するのは勇気がいりますが、途中で「間」をあけて沈黙してもいいんです。 ──「7つの黄金法則」では、お客様や上司などから「頭がいい」という信頼を得る方法についてふれられています。なかでも組織を率いるリーダーが特に重視するとよいポイントはありますか。 基本的にリーダーもメンバーも信頼を得る方法は変わりません。ただ、リーダーは利害関係者が多いため、考える範囲が広くなるんですね。ドラッカーも、マネジメントにおいて「社員(部下)をマーケティングしなさい」といったことを語っています。メンバーのニーズや課題の本質は何なのかを常に考えるという大原則は普遍的なものです。 実は、本人の言葉と本来の課題が違うケースも往々にしてあります。私自身、「経営者本人の語る課題をうのみにするな」と上司から何度もいわれました。 たとえば、社長が「うちの課題は人材育成なんだよ」と話していても、すぐに信じないこと。「では人材育成の施策の現状はどうですか」と、実際の行動について深掘りしてみるんです。そこで育成に検討のリソースや予算をほとんど割いていないようなら、その社長は人材育成をそこまで課題と捉えておらず、真の課題は別のところにある可能性が高いのです。 個人でも、「起業したい」と語っているのに会社をやめずに何年も起業準備中の人がいたらどうか。それは、本心としては「起業準備していることをほめてほしい」だけかもしれません。 このように、相手の言葉を額面通り受けとるのではなく、本当の課題や思いを汲みとるところも「傾聴力」に含まれると考えています。 ■日々の「面白いこと」を忘れないように、言葉にしたい ──安達さんは、書籍、講演、WEBメディアを通じて、ビジネスパーソンにとって役立ち、実践しやすい知恵を発信し続けています。その背景にある想いは何でしょうか。 自分で文章を書くようになったのは2013年のこと。「Books&Apps」で発信しはじめた当初の目的は、マーケティング会社ティネクトを立ち上げたばかりで、その引き合いをいただくためでした。 最初はきつかったのですが、2年ほど続けていると書くのが楽しくなってきて。いまは息抜きのようになっています。人とお会いしたり本を読んだりするなかで、面白い学びはいっぱいありますよね。それを忘れないようにしたいという気持ちが強く、自分なりに咀嚼してアウトプットしているんです。それを楽しみにしてくださる読者の方々がいるのはありがたいですし、それも継続の後押しになっています。