最愛の夫の死から10か月 倉田真由美さんがいまようやく明かす葬儀のこと「看過できない見積額が届きました」
漫画家の倉田真由美さんの夫、叶井俊太郎さん(享年56)は、すい臓がんの闘病の末、旅立ったのは今年2月のこと。葬儀のことを振り返るには時間がかかったと語る倉田さんが、いま、改めて当時のことを明かしてくれた。 葬儀のとき、献花台に飾られた叶井俊太郎さんの遺影「『そんな金があったらオレが使ったのに!』と夫に言われそう…そうだよね、ゴメン」と倉田さんは振り返る
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。 夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック は現在Amazonで無料で公開中。
生前は向き合えなかった葬儀のこと
少し時間が経ったので、夫の葬儀の話をします。 以前にも一度書きましたが、すべてを詳らかにするのは少し控えていました。今回は広く知られてほしい、お金のことを書きます。 家族が亡くなった直後というのは、多くの人にとって平常心を保つのが難しい、パニック状態にあります。私もそうでした。夫はすい臓がんだったからいわゆる急死の範疇には入りませんが、でも私にとっては急でした。まだまだ、もっと生きると思っていたから。夫は直前まで寝たきりになることもなく、普通に動いて普通に話していたから。 急だったし、心の準備なんてできているはずもなく、でも本当に直後から向き合わなくてはならないのが葬儀の件です。「今はしんどいから後日落ち着いてから」というわけにはいきません。 私はこの時期のことをあまりはっきり記憶できていません。ともかくつらくて悲しくて、もう葬儀なんて誰かが勝手に決めてほしい、夫が帰ってくるわけじゃないんだから私はお金を出すだけでいい、と思っていたことだけは覚えています。
ごく普通でよかったのに…
でも、人任せにしていいことではないんですよね。家計に関わることですから、少なくとも「このくらいで」という予算は決めておくべきでした。これは病気になった後では話しにくい内容でもあるので、自分も家族も元気な時に考える必要がある重要事項です。 夫は小さな会社のサラリーマンでした。本人のキャラクターが面白いために少し知名度はありましたが、高給取りというわけでも人気者の有名人というわけでもありません。我が家自体、お金持ちでもない一般家庭です。葬儀の規模なんて、ごく普通でいいんです。 そう思っていたし、葬儀屋と交渉してくれた妹や義理の妹もそのつもりだったはずです。でも、葬儀屋と相談を重ねていろんなことを決めていき最終的に出た最初の見積もりは、780万円。横で頷くだけだった私も、さすがに「ではそれでお願いします」と言えませんでした。 妹たちもそれは無理と交渉し直しましたが、最終的に500万円ほどになりました。これでも高いですし、実際香典分を差し引いてもかなりの金額が持ち出しになりました。 「そんな金あるなら娘のために遣ってくれよ!」 天国の夫はきっと言っています。あなたが生きている時に、元気なうちに、もうちょっと話しておくべきだったよね。 倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯 夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。