ツメアト映画~エポックメイキングとなった名作たち~ Vol.22 『ヒート』が映画界に残したものとは?
ほかにも『トップガン マーヴェリック』(2022年/監督:ジョゼフ・コシンスキー)に懐かしのアイスマン役で登場したヴァル・キルマー(当時35歳)が若い! とか、ヴィンセントの義理の娘役のナタリー・ポートマン(当時14歳)が可愛い! とか、ガンマニアとしても有名なマイケル・マン監督の変態的なまでに本物の銃にこだわる映画術など、『ヒート』の見どころや逸話はたくさんある。 さて、いま巷で話題が盛り上がっているのは、まさかの続編『ヒート2』の行方である。2022年8月、小説版『ヒート2』が全米で発売され、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト初登場1位を獲得した。これがなんとマイケル・マン監督による小説家デビュー作なのだ!(共著者はエドガー賞受賞作家のメグ・ガーディナー)。もともと『ヒート』は、マン監督が90分のテレビドラマとして撮った『メイド・イン・L.A.』(1989年)のセルフリメイクであり、脚本も彼自身のオリジナル。それくらい思い入れのある物語なのだ。 そして今年(2023年)5月、邦訳版(訳:熊谷千寿/ハーパーコリンズ・ジャパン刊)も発売された。物語は映画『ヒート』のラストシーンの翌日、ヴァル・キルマーが演じた強盗団のひとり、クリス・シハーリスが満身創痍でロサンゼルス脱出を試みるシーンからはじまる。運命のあの日を境に12年間が交錯し、強盗団のニールとシカゴ市警時代のヴィンセント――デ・ニーロとパチーノが演じたふたりの意外な過去と、メキシコの麻薬カルテルや南米の台湾系ファミリーも巻き込んだクリスの鬼気迫る逃避行が壮大なスケールで描かれていく内容だ。 果たして映画版のほうはどうなるのだろう。一時期、主演はアダム・ドライバーが務めるかも? という情報が流れたが、むろんまだ確定ではない。彼はまもなく全米公開(2023年12月25日)となるマイケル・マン監督の最新作『フェラーリ』にも主演している。現在80歳のロバート・デ・ニーロと83歳のアル・パチーノは、いったいどういった形で映画に絡むのか、あるいは絡まないのか? そしてデ・ニーロと同じく御年80歳のマイケル・マン監督(1943年生まれ)は自らメガホンを取るのか? ようやく米俳優労組の長期ストライキが合意に至り再開したハリウッドの大きな企画のひとつとして、期待は高まるばかりである。 『ヒート』 製作年/1995年 製作・監督・脚本/マイケル・マン 出演/アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ヴァル・キルマー、トム・サイズモア
文=森直人 text:Naoto Mori