「プロ野球90年」家族3代巨人ファン、女流棋士・矢内理絵子さんが語る野球の魅力 「将棋では絶対に味わえない盛り上がり」
発足から90年を迎えたプロ野球への思いを聞くインタビューシリーズ。家族3世代で巨人ファンという女流棋士、矢内理絵子さんが、将棋の世界から見えるプロ野球の魅力を語ってくれた。(聞き手 共同通信・小海雅史、児矢野雄介) 【写真】「世代ナンバーワン左腕」と呼ばれた元巨人の投手は、なぜ万引を繰り返したのか 検察官は「人並み以上の身体能力を、どうしてもっと良いことに使えなかったのか」と…
▽将棋にはない連帯感 両親がジャイアンツファンで、父は長嶋茂雄さんを応援する世代。母は吉村禎章さんが好きだったようです。野球というとジャイアンツが身近にありましたし、後楽園球場にも見に行きました。私は将棋を始めてからはテレビを見ない生活になりましたけど、それ以前はしょっちゅうジャイアンツ戦の中継を見ていました。 棋士になってからもよく東京ドームに行っています。有料のファンクラブ会員だったときもあって、仲のいい女流棋士を誘って一緒に応援していました。阿部慎之助さんの応援のコールは盛り上がりやすかったですね。全然知らない人と「やったー」みたいにハイタッチできる。非日常の雰囲気がすごく好きです。2012年に巨人が日本一を決めた試合を見に行けて、「すごい!」と全身に鳥肌が立つぐらい、将棋では絶対に味わえないような大盛り上がりでした。 将棋は基本的に個人の勝負なので、同じ一門でも対局となれば全力でたたきつぶしにいきますし、勝ったときにみんなで喜べるということはなかなかありません。チームスポーツの連帯感はうらやましいですね。ピンチになると、コーチや内野手の方がピッチャーのところに来て、ちょっと声を掛けたりするじゃないですか。将棋にもコーチのような存在がいてくれたらいいのになとよく思います。 ▽親しみやすいお兄さん
中畑清さんはキャラクター的にすごく明るくて、子供にとっても親しみやすかった。コマーシャルにもよく出ていて、すごく元気なお兄さん。チャンスに強いイメージで、応援しがいがありました。DeNAの監督をされていたときは印象が全然違いましたね。子どもの頃に見ていた底抜けに明るい雰囲気とは違って、やっぱり風格が出るなと思っていました。ラジオで共演させていただく機会があって、お会いしたら昔の印象のままで、オンとオフの差はすごいなと思いました。 現役では長野久義選手が好きです。「いい人」のエピソードしか聞いたことがないし、真面目に頑張って取り組んでいる感じが応援したくなっちゃいますね。 ▽野球にも大局観 棋士は色紙に座右の銘を書く機会が多いのですが、物事の本質を見抜くという意味の「慧眼」という言葉が最善手を追求していく将棋にぴったりで、大切に書き続けています。野球でも見誤ってはいけないものはあると思うんですよね。