シリコンバレーは「自動車」を作れるか?
OSの標準化は単なる合理化の一手段
こういうことがクルマを作るという話なのであって、電気自動車ならモーターさえ買ってくればクルマが作れるという話は、あまりにも実態を知らない話に聞こえる。 ではグーグルやアップルがやっていることは無駄なのかと言えば、そんなことはない。自動車メーカーはどこのメーカーでも抱えている共通の課題がある。そういう問題の解決は、各社で独自にやる必要がない。それはまさしくOSとアプリケーションの関係に置き換えることができる。「キーボードで打った文字をモニターに表示する」、あるいは「ドキュメントをプリンターで印刷する」。そういう部分を一つひとつのアプリに組み込んで複雑にするのは無駄だから、最大公約数的な要素をOSに任せることになったのだ。 クルマも全く同じだ。OSはOSとして当たり前の機能を充してくれればそれでいい。そうして効率化していくことによって自動車メーカーは社内のリソースをもっと独自の技術に振り向けることができる。前述のAICEがやっていることもそういうことだ。 より多くの機能をより安価に実現するためのOSであって、それを取り出して自動車がコモディティ化して誰でも作れるようになるというのは、あまりにも理解が浅い。シリコンバレーが第二のデトロイトになる日は来ない。 (池田直渡・モータージャーナル)